『スクウェアのトム・ソーヤ』は1989年11月30日にファミリーコンピュータ用ソフトとしてスクウェアから発売されたロールプレイングゲーム。
アメリカの小説「トム・ソーヤ」の冒険をモチーフにした作品。
本作より前に「トム・ソーヤーの冒険というファミコンソフトが発売されているためタイトルに「スクウェアの」が追加されている。
スクウェア
この当時のスクウェアは1987年に『ファイナルファンタジー』、1988年には『ファイナルファンタジーⅡ』を発売しており、勢いに乗っている時期であった。
この頃FCではRPGブーム真っ只中であり各メーカーからたくさんのRPGが発売されていたが、スクウェアはRPGの常識に囚われない独創的なアイディアで他メーカーとは完全に一線を画してた。
本作においても他のRPGではまず見られないようなシステムが数多く採用されており、これまでにない斬新な内容となっている。
ストーリー
1855年、アメリカ―。ミズリー州にある田舎町セント・ピーターズバーグ。
この町に住むわんぱく少年のトム・ソーヤはある晩宝探しの夢をみる。
どうしてもただの夢とは思えなかったトムは、仲間たちを集め幻の宝を求めて冒険の旅にでるのだった。
美しいグラフィック
まず最初に挙げられるのはなんと言っても、そのグラフィックであろう。
80年台のFCのグラフィックとしては最高の出来であり、綿密に書き込まれたグラフィックは舞台である1855年のアメリカ・ミズリー州の田舎町を美しく再現している。
当時のRPGのキャラクターは1マスで表示されてるものがほとんどだが、本作は主人公を筆頭に登場人物も含めキャラクターのサイズが大きく描かれており、喜怒哀楽の表情やバラエティーに飛んだアクションを見せてくれる。
斬新なシステム
本作ではそれまでのRPGの常識に囚われず、斬新なシステムが多数採用されている。
フィールドマップは存在せず、数々の町や森、川などが繋がりひとつの世界となっておりキャラの移動により場面は変化していく。
プレイ画面は上下にに分割されており、上画面はメインとなっており映画の様なアスペクト比で描かれ、下画面はコマンドや会話時のセリフが表示される。
経験値やレベルといった概念がなく毎回の戦闘ごとにHP・攻撃力・守備力・素早さのパラメーターが少しずつ成長してゆくという『ファイナルファンタジー2』に通ずる成長システムとなっている。
このような意欲的に新しいアイディアを考えていく姿勢が、のちにスクウェアが『ファイナルファンタジーⅢ』や『ロマンシング サ・ガ』などの名作を多数産み出す原動力となったのだろう。
やりすぎ要素
しかし積極的に採用された斬新なアイディア中には、ちょっとやりすぎとも思えるおバカ仕様も混ざってしまっていた。
例えば「ふこうむし(不幸虫)」というモンスターの特殊攻撃は“ファミコンのリセットを押す”というゲーム史上類を見ない凶悪な攻撃である。
「ふこうむしは ボタンをおした!それは リセットボタン だった!」
というメッセージと共に、なんと本当にタイトル画面に戻ってしまうのだ。
味方キャラにではなく直接ゲーム機本体に対するこの取り返しのつかない攻撃は、他ゲームのどのような痛恨の一撃より深いダメージをプレイヤーに与える(笑)。
他にも本作ではHP数値がなぜか小数点第一位まで設定されている。
上は三桁までなので、なぜ素直に四桁にしなかったのかは謎であるが「0.1のダメージ!」などと出るとちょっと笑える。
さらにゲーム中にはアイテムを渡すとヒントをくれるキャラクターがいるのだが「それはあげちゃダメだろw」というアイテムもあげてしまえる。
例えばセーブをするの必要な“テント”をあげるとそれ以降セーブができなくなり、クリアに必須のアイテムをあげるとクリアできなくなる(笑)。
これらは面白いけどやりすぎな仕様としてプレイヤーたちに語り継がれている(笑)。
最後に
開発陣の革新的な試みで今までにない斬新なゲームとなった本作。
斬新すぎておバカな部分も多いがオリジナルティ溢れる良作であった。
ストーリーも王道ながらも随時楽しめる展開が散りばめられた飽きさせないものであり、その物語を彩るBGMも『ファイナルファンタジー』の植松伸夫が担当しているだけあって感情移入に拍車をかける名曲ばかりである。
それらのBGMが裏技によりサウンドテストモードで全曲試聴可能なのも憎いサービスだ。
付け加えて、この時代のFCソフトとしては抜群に高い自由度を誇り、好きなようにイベントを進められるのも楽しかった。
このように時代的なことも加味し、総合的に評価すると名作と言っても過言ではないタイトルと言えるだろう。
今後のスクウェアだけでなく、ゲーム業界自体が“どんどん凄いことになっていく”のだろうと思わされたタイトルであった。
今回は奇抜なアイディアてんこ盛りの斬新なRPG『スクウェアのトム・ソーヤ』の紹介でした!
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