『ビクトリーラン』は1987年12月28日にPCエンジン用ソフトとしてハドソンから発売されたレースゲーム。
その後、PCエンジンアーカイブス・バーチャルコンソール・スマホアプリなどで配信され、2020年3月に発売されたPCエンジン miniにも収録されている。
『ビクトリーラン』とは
『ビクトリーラン』はハドソンのPCエンジン用ソフト第3弾として発売された3D視点のレースゲーム。
「栄光の13,000キロ」というサブタイトルが付けられている。
ダカール・ラリーをモチーフとした、PCエンジン初のレースゲームである。
詳しくは後述するが、走行状態によって車体のパーツが疲弊するために走行コースを見越して交換パーツを用意するなどの戦略的要素が、この時代のレースゲームとしては斬新であった。
PCエンジンのスペックを存分に引き出したグラフィックは、この時代のメインハードであるファミコンに比べてもその差は顕著であった。
BGMは『チャレンジャー』(1985年)や『スターソルジャー』(1986年)を手掛けた国本剛章が担当しており名曲が連なっている。
これらの要素が噛み合ってレースゲームとしての爽快感はかなりのモノであった。
ゲームシステム
車両はポルシェ・959をイメージしたスポーツカー。
トランスミッションは4速マニュアル仕様であり、最高速度は239km/h。
起伏に飛んだコースにはトラックやバイクなどが走行している。
それらの車両を追い抜き、路上にある小石や泥を避けながらゴールを目指す。
タイヤ・ギア・サスペンション・エンジン・ブレーキのパーツ表示があり、各パーツの耐久度は走行により消耗する。
耐久度が減るとタイヤながらグリップが低下、エンジンなら最高速度が落ちるなどレースが不利になる。
ゲームスタート時に任意に選択した各パーツの予備を合計で20個持つことができ、ステージ間で消耗したパーツを新品に交換することが可能。
オフロードとオンロードが混合している全8ステージを規定タイム以内での走破を目指す。
スタート時に持ち時間が1分間あり、ステージのゴールタイムが規定時間より短ければその分持ち時間がプラスされ、オーバーした分はマイナスされる。
プラスされた持ち時間は自ステージに持ち越せるが、持ち時間が0分になった時点でゲームオーバーとなる。
開発経緯
PCエンジンの発売の2ヶ月後のリリースであり、ほとんどローンチタイトルと言えるタイミングでの発売は、当時トップシェアを築いていたファミコンに対してハードスペックの優位性をアピールする狙いがあった。
3Dタイプのレースゲームはハードスペックの比較には格好の存在だったのだ。
ファミコンの発色数52色に対してPCエンジンの発色数は512色のためグラフィックの差は一目瞭然であり、速度アップや起伏・カーブによるスクロール、迫る対向車の拡大など演出面も素晴らしいクオリティーを実現していた。
ゲーム内の時間経過に応じて朝・昼・夕方・夜の4パターンに変化するグラフィックも美しくプレイヤーの気分を盛り上げる。
音源もファミコンのメイン3音に比べPCエンジンはメイン6音とほぼ2倍の音源数だったので、グラフィック・サウンド共にファミコンと比較すると驚きのクオリティーであった。
最後に
前述したようにグラフィック・サウンド・システムと高水準と言える内容であった本作であるが、実は致命的な欠点が存在した。
それは難易度が恐ろしく高いということだった(笑)。
正確には各ステージに設定されている規定タイムがシビア過ぎたのだ。
レースゲームとしての純粋な難易度も高めなのにも拘らず、1~2回クラッシュするとほぼタイムオーバーでゲームオーバーになる。
せっかく臨場感あふれる爽快感さがウリの次世代機レースゲームなのに、1ミスで取り返しがつかなくなる鬼畜難易度にプレイヤーはウンザリしてしまいゲーム自体を楽しめなかった。
その結果、名作となり損ねた本作の評価は“ややクソゲー寄り”となってしまった(笑)。
余談ではあるが、本作は開発当初プレイヤーカーは三菱パジェロであった。
それが開発過程の中でポルシェ・959に変更されたためにパッケージのイラストと実際のプレイヤーカーの車が違っている。
というかポルシェに変えたならパッケージイラストも変更しろと言いたい(笑)。
これが許されるのも古き良き昭和という時代のユルさであろう(笑)。
今回はPCエンジン初のレースゲーム『ビクトリーラン』の紹介でした!
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