『ドルアーガの塔』は1985年8月6日にナムコよりファミリーコンピュータ用ソフトとして発売されたアクションロールプレイングゲーム。
オリジナルは同社が1984年に稼働させたアーケードゲーム。
ファミコンを始め、MSXなどの各種パソコン、携帯アプリやナムコのレトロゲームカップリング作品などで多々復刻されており、様々なプラットフォームに移植されているナムコの看板タイトルのひとつである。
『ドルアーガの塔』とは
“ゲームの神様”の異名を取るゲームクリエイター遠藤雅伸氏が『ゼビウス』(1983)の次に開発したタイトルである。
アイテム取得による成長要素を含んだARPGで、迷宮となっている60階建の塔を探索しつつアイテムを集め、キャラを強化して塔の最上階に潜む大悪魔ドルアーガの打倒を目指す。
この様にキャラが成長していくシステムや、体力制の概念が取り入れられている事などからアーケードゲーム初のRPGといえる作品である。
当時はまだしっかりとした背景を持ったタイトルはほとんど無い中に拘らず、本作の神話を元とした魅力的なストーリーと深くまで創り込まれた世界観は賞賛された。
後述する“超高難易度”であるゲーム内容も当時のゲーマーたちの間で話題となり、インターネットなどない時代において本作の攻略方法の研究は一大ブームと言えるほどでありゲームコミュニティーの発展に大きく貢献したと言われている。
ストーリー
神から授けられたブルークリスタルロッドの豊かな恵みで繁栄する平和な小王国バビリムは、繁栄を妬みロッドの略奪を目論むスーマール帝国に侵略され制圧されてしまう。
国民は奴隷にされ、天高くそびえる塔の建設に従事させられた。
これを知った神は怒りの雷を落とし塔を破壊した。
しかし時は既に遅く塔の影によってロッドの光が遮られたことにより、かつてバビリム王国の守護神である女神イシターとの戦いに敗れロッドに封じられていた大悪魔ドルアーガが復活を果たしてしまった。
ドルアーガは魔力を用いて塔を修復して天上界からブルークリスタルロッドを盗み出して塔内に立てこもる。
女神イシターの巫女であるカイがロッド奪還のため塔に挑むもドルアーガの魔力に敗れて石に変えられ、囚われてしまった。
バビリム王国の王子であるギルは、ドルアーガを倒してロッドを奪還し囚われた恋人のカイを救うべく、神より授かった黄金の鎧を身にまといドルアーガの塔に挑むのだった…。
ファミコン版『ドルアーガの塔』
本作はファミコン初のRPGを謳っており、パッケージにもしっかりと「RPG」の文字が書かれている。
しかしこの時代はまだPCゲームの『Ultima』や『ウィザードリィ』くらいしかRPGが存在していなく、ファミコンユーザーでRPGと言うジャンルを理解しているものなどほとんどいなかった。
その為、本作をACTとしての認識を持つファミコンユーザーが多かった。
本作をRPGとは見なさず、ファミコン初の本格RPGと言えば『ハイドライドスペシャル』を挙げる者もいる。
ファミコン版はアーケード版に比べ迷路が狭くなっており敵の数が少なくなっている。
そしてFC版にのみ宝箱の出現条件が通常版とは異なる「アナザー・ドルアーガの塔」と呼ばれるバージョンがあり、選択するとタイトル文字の色が灰色から濃緑に切り替わる。
このバージョンは俗に「裏ドルアーガ」と呼ばれ、その後様々なハードで発表された移植版でも、それぞれのプラットフォームオリジナル仕様の「裏ドルアーガ」が収録されている。
PlayStation版に至っては、「裏ドルアーガ」とは別に「闇ドルアーガ」まで存在しており、こちらはさらに難易度が高い。
ゲームシステム
プレイヤーは主人公ギルを操作し、制限時間内にフロア内にある鍵を取り、扉に到達することでその階のクリアとなる。
塔は全60階、全面クリアでエンディングを迎えてゲームクリア。
各階では条件を満たすとスタート地点に宝箱が出現する。
中には様々なアイテムが入っており、これを取得することでギルは少しづつパワーアップしていく。
ギルは剣と盾を持っており、敵にダメージを与えて倒すことができる。
逆にダメージを食らいギルの体力が0になるか、即死系の攻撃を受けるか、時間切れでギルが1機減る。
残機制であり、持ち人数を全て失うとゲームオーバー。
コンティニューは可能であり何度でもできる。
マニアも唸る高難易度
本作は各フロアで隠された宝箱を出現させて、アイテムを手に入れギルをパワーアップさせていくのが基本である。
アイテムを手に入れないで先に進むと、先のフロアの難易度が上がり過ぎて厳しいだけでなく、中にはクリアするために必ず必要なアイテムもあるので各階のアイテム探しは実質のところ必須作業である。
それにも拘らず、アイテムの出現方法に関しては一切ノーヒントであり、その方法も普通は絶対に思いつかない方法が多く攻略本無しでの攻略は不可能に近い。
しかし謎解きの方法が全て解ると、ゲームバランスは適度になり、良作なARPGとなるので攻略本必須の名作と言えるタイトルである
素晴らしいBGM
BGMは当時ナムコのゲームミュージック作曲家である小沢純子氏。
のちに『さんまの名探偵』『ファミリージョッキー』『プロ野球ファミリースタジアム』など数々のナムコファミコンソフトの耳に残る名曲たちを生み出す天才作曲家だ。
『ドルアーガの塔』のBGMは小沢氏にとって初めて作曲したゲームミュージックだと言われている。
当時のゲーム(コンシューマ・アーケード問わず)はBGMの曲数は1つというのが定番であった。
そんな中、本作は5曲も用意されており、しかもどの曲も現在でも評価の高い名曲ぞろいであり語り継がれている。
ちなみにラスボスであるドルアーガとの決戦では専用の戦闘BGMが流れるのだが、この時代にそのような演出があるタイトルは他に類を見なく、ラスボス戦の専用曲があるゲームとしての先駆けだったと言われている。
最後に
のちに数々のプラットフォームに移植され、続編である『イシターの復活』(1986年/AC)や『カイの冒険』(1988年/FC)なども制作される。
この三部作は総称して『バビロニアンキャッスルサーガシリーズ』と呼ばれる。
ナムコの看板メニューとなった本作であるが実は『マッピー』(1983年/AC)の余った基盤ROMの償却のために「なんか作れ」と上から指示を受けて制作されたタイトルだった。
余った基盤は2000枚ほどだったので、それが売れればOKと言われた遠藤雅伸氏は好き勝手のびのびと制作したのだが、予想だにしない大ヒットとなり、逆に基盤ROMを追加増産する羽目になったという逸話がある(笑)。
歴史に残る名作とは、意外と数奇な運命によって誕生することが多いものである(笑)。
今回はナムコの誇る看板タイトル『ドルアーガの塔』の紹介でした!
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