『ドラゴンクエストⅢ そして伝説へ…』は1988年2月10日にファミリーコンピュータ用ソフトとしてエニックスから発売されたロールプレイングゲーム。
ドラゴンクエストシリーズの第3作であり略称は『ドラクエ3』。
堀井雄二の脚本、鳥山明のキャラクターデザイン、すぎやまこういちの音楽などにより爆発的な人気を博し、発売日には量販店の前に数キロメートルの行列ができるなどの社会現象を巻き起こした。
- ドラゴンクエスト3とは
- あらすじ
- 世界地図
- ゲームシステム
- 素晴らしいサウンド
- ROM容量との戦い
- 販売本数
- 社会現象まで巻き起こしたドラクエ3発売騒動
- おきのどくですが ぼうけんのしょ1ばんは きえてしまいました。
- そして伝説へ…
- あわせて読みたい
ドラゴンクエスト3とは
ドラクエ史上最高のシナリオと謳われるロトシリーズ3部作の完結篇である。
前2作『ドラゴンクエスト』『ドラゴンクエストⅡ 悪霊の神々』の主人公は、古に伝わる勇者ロトの末裔であった。
ドラクエ1でかつてロトが闇から救ったと古に伝わる世界「アレフガルド」の秘密が本作で判明する。
ただし、堀井雄二は『1』製作時は『3』まで想定しておらず、後付ながらストーリーがうまく繋がったのはよかったと述べている。
物語までの終盤まで進めたプレイヤーはそのロト伝説の秘密に驚愕し、深く感動した。
筆者もその一人だが、インターネットが無い時代だったのでネタバレが起こりにくく、ゲームを進める事により初めてこのシナリオを知るプレイヤーが多かったのも、これ程までの反響を呼んだ要因の一つだと分析する。
あらすじ
勇名を馳せたアリアハンの「勇者オルテガ」は、初子を授かった直後より世界の支配を企む「魔王バラモス」を倒すべく旅立ち、そしてそのまま消息を絶った。
伝聞に寄れば、彼は旅の途中で魔物に襲われ、戦闘の最中に火山に落ちて命を落としたのだという。
オルテガの子供(=主人公)は、自身の16歳の誕生日をきっかけにして父の遺志を継ぐために、アリアハン王に願い出て仲間とともに冒険へと旅立つ。
世界各地で起きる不思議な事件を解決しながら、宿敵魔王バラモスの居城へと乗り込んだ主人公達は、ついにバラモスを退治する。
しかし、真の黒幕である「闇の支配者ゾーマ」と、もうひとつの世界 「アレフガルド」の存在が明らかになり、主人公は再び冒険の旅に赴くのだった。
アレフガルドの登場、そして真のボスの存在。
そして自身の正体を知った時は衝撃だった。
この壮大な物語をリアルタイムで経験できた事を心から幸せだと思う。
これはクリア後に知った事だが、主人公の名前を入力する時は4文字以内であれば自分の名前でもアニメキャラの名前でも「ああああ」などのふざけた名前でもなんでも入力できた。
しかしただ一つだけ入力できない名前があった。
そう、「ロト」という名前だけは入力不可能だったのだ…
世界地図
上の世界は、現実の地球の地形が元になっており、地名を似せたり、実際の地理・歴史へのオマージュがふんだんに取り入れられている。
堀井雄二によれば、「ロマリア」はローマとイタリア。
「エジンベア」はイギリスの地名エディンバラ地方。
「シャンパーニ」はフランスの地名シャンパーニュ地方。
「ノアニール」はノルウェー。
「アッサラーム」はアラビア語の挨拶。
「イシス」はエジプト神話の女神イシス。
「スー」はスー族(ネイティブ・アメリカンの部族のひとつ)。
「ポルトガ」はポルトガル。
「グリンラッド」はグリーンランド。
「レイアムランド」は南極大陸の一角グレイアムランド。
などがそれぞれ由来となっており、「アリアハン」は空想上のムー大陸がモデルとのことである。
そして下の世界は『ドラゴンクエスト1』の舞台であるアレフガルドである。
精霊ルビスによって創られた地。
大魔王ゾーマによって闇に閉ざされており朝が来ることがなく、「闇の世界」と呼ばれている。
フィールドのBGMは第1作の曲を踏襲しており、その地に初めて降り立った時、プレイヤーはその懐かしさに涙ぐんだ。
ゲームシステム
パーティーシステム
パーティ制を採用した前作『DQII』では、仲間になるのは個性を持った固定キャラだったが、本作では(当時の)一般的なRPGと同じく、名前・職業・性別を自分で決めたキャラをパーティに入れて冒険できる。
主人公の職業は「勇者」固定で、メンバーからも外せない。残りの3人がメイキングしたキャラとなる。
メンバーを3人以下にすることもできる。
仲間キャラクターの登録やパーティの入れ替えができるのは、スタート地点の街「アリアハン」にある「ルイーダの店(ルイーダの酒場)」。
勇者以外の職業は「ダーマ神殿」で転職が可能。転職するにはレベル20が必要だが、転職後はレベル1になるのでレベル上げをやり直す事になる。
戦士系は魔法使いや僧侶に、またはその逆のパターンで転職すると魔法も肉弾戦も可能なキャラになる。
魔法使いから僧侶、またはその逆で攻撃魔法も防御魔法も唱えられるキャラになる。
職業
勇者
主人公専用の職業。勇者から他職業への転職はできず、主人公以外が勇者になることもできない。
ステータスはちから・HPが高く、他の能力も平均的だが、MPが低い。
戦士
剣や斧などの武器を使いこなす戦闘のプロ。
ちから・HPが高く、多くの種類の武器・防具を装備することができる。
すばやさ・うんのよさが低いため敵に先制されやすい。
武闘家
戦士のような武器を使わず、体を使っての闘いを得意とする職業。
レベルが上がるほど高確率で会心の一撃を繰り出すようになる。
ちから・すばやさが高いが、剣や斧などを装備すると逆に攻撃力が低下する。
魔法使い
文字通り、多数の魔法を使いこなす職業。
主に攻撃呪文や補助呪文を覚え、成長していくと超強力な攻撃呪文を習得する。
MP・すばやさが高いが、その反面、ちから・HPなどは低く、肉弾戦闘力は低い。
僧侶
神に仕える職業で、回復呪文のエキスパート。回復・解毒・蘇生の呪文と僅かな攻撃呪文を覚える。
魔法使いと比べ多くの武器・防具を装備でき、ある程度打撃戦もこなすが、少し打たれ弱い。
商人
武器で魔物と戦う能力を身につけた旅の商人。
アイテムの鑑定能力を持ち、戦闘後に余分にお金を拾うこともある。
遊び人
娯楽施設で働く職業。男性は道化師、女性はバニーガールの格好をしている。
うんのよさは高いが、それ以外の全てのステータスが平均を下回っている。
戦闘中にコマンドどおりの行動をせず、自分のターンを眠ったりイタズラしたりなどロクな事をしない。
唯一であり最大の長所は転職可能レベルまで育てると「さとりのしょ」が無くても賢者に転職することができるという事である。
賢者
厳しい修行を積んだ者だけがなれる職業で、僧侶・魔法使い両方の呪文を習得する。
ルイーダの酒場での新規登録はできず、転職によってのみこの職業になることができる。
遊び人を除き、賢者への転職には「さとりのしょ」が必要。
昼と夜
本作では「昼」「夜」という時間の概念が取り入れられた。
フィールドマップ上を一定歩数歩くと、時間が昼から夜へ、夜から昼へと移り変わる。
昼と夜では城や町などの様子が異なる。
夜は町に住む人々も寝静まり店なども多くが閉まるが、酒場など夜に限り賑わう場所もある。
夜は昼間よりもフィールドでのモンスターの出現率が高く、モンスターのパーティーも手強くなるほか、地方によっては夜にならないと登場しないモンスターもいる。
格闘場
格闘場及びギャンブル要素が本格的に登場したのはこの作品からである。
前作はアイテムを買った際にランダムでもらえる事がある福引券を利用した福引が有ったがギャンブルとは少し違った。
今作の場合は自分が持っているゴールドを勝つと思うモンスターに賭けてバトルを見物するといったもの。
勝利した際に手に入るゴールドはモンスターによって倍率が違う。
弱いモンスターになればなるほど倍率が高くなる設定だ。
大穴に賭けてそのモンスターが見事勝ち残った時の興奮は堪らなかった。
シンプルながらかなり面白くしばらく冒険を忘れ入り浸る勇者が続出した。
素晴らしいサウンド
すぎやまこういちによるBGMはシリーズ全てにおいて好評だが、その中でも特に素晴らしいと言われているのがこの『3』である。
筆者もそれには同意見であり、全シリーズの交響組曲をCDで所有しているが、この『3』がダントツで好きであり1番聴いている。
フィールド曲「冒険の旅」、ラーミアの曲「おおぞらをとぶ」、通常戦闘曲「戦闘のテーマ」、城の曲「王宮のロンド」等、物語の雰囲気を盛り上げるためにも、曲単体として聴くにも十二分なものばかりである。
特に闇の支配者ゾーマとの最終決戦で流れる「勇者の挑戦」は今聴いても鳥肌が立つ旋律である。
交響組曲「ドラゴンクエストⅢ」戦闘のテーマ〜 BRASS EXCEED TOKYO
ループ前半はアレフガルドのフィールド曲「アレフガルドにて」をベースにし、ループ後半は『ドラゴンクエストⅡ』のフィールド曲「遥かなる旅路」をベースにした戦闘曲である。
一瞬でも気を抜くと間違いなく瞬殺されてしまう最強の敵ゾーマとの、世界の命運を賭けた壮絶な戦いの緊張感を後押ししてくれるようなハイテンポなリズムが特徴。
ロトシリーズのみならず、ドラクエシリーズ全体を見ても最大の人気曲といっても差し支えない。
ROM容量との戦い
ROMは前作の2倍である2メガビット(256キロバイト)ROM を使用、バッテリーバックアップのセーブファイル容量は64キロビットとなっている。
ゲームシステム面では、仲間キャラクターの名前・職業・性別を自由に選び、パーティーを自由に編成して冒険できるという、キャラクターメイキングのシステムを取り入れている。
この様な自由なシステムが実現できたのは、バッテリーバックアップが実装された事が大きい。
前作ドラクエ2に比べ世界マップの広さは約65000マスとドラクエ2とほとんど変わらない広さではあるがダンジョン数は1.3倍、街の数は1.5倍、祠の数は2倍ほどにそれぞれ増えた。
それだけではなくシリーズ初となる昼・夜のフィールドの実装により前作の2倍あるとはいえROM容量がかなり不足し、イベントやデータの取捨選択にかなり苦労したとの事。
実際にカットされたものとして下記の様なものがある。
削除された幻のモンスター
複数のモンスターは発売前のゲーム情報雑誌などに紹介されていて実際にそのビジュアルも掲載されていたがカットとなっている。
マクロベータ
ローブにドクロの杖と帽子を身に着けた黒人風呪術師といった外見で、後のしりょうつかいに近い。
かぼちゃおとこ
レイピアのような細身の剣での二刀流という、あまり見かけない戦闘スタイル。
うしおとこ
名前通り牛の格好をした人間型のモンスター。
アークデーモンに似ている。
ガスドラゴン
平べったい体の四足歩行で、ドラゴンというよりとかげに近い。ガメゴンとドラゴンを足して2で割ったような顔をしている。
リザードマン
誰もが知っているⅤのリザードマンと異なり、小太りな姿で赤い鎧を身につけていた。
タワーオブアイ
タワーの名の通りに柱のような姿をしており、グロテスクな外見は妖怪「百目」を彷彿とさせる。
ぶたおとこ
ドラゴンボールの「ウーロン」に似ているモンスター。
ウーロンを狂暴化したような感じである。
消えた街とBGM
ドラクエ3は世界地図をモデルとしたワールドマップになっている。
その中でもエジプトのピラミッドやジパング(日本)は独自のBGMが用意されていたが、実はスイスをモデルにした街もありヨーデル風のBGMもあった。
これも容量の関係上カットされている。
シンプルなタイトルロゴ
それ以外にもタイトル画面が真っ黒な無音の画面に「DRAGON QUEST III」と表示されるのみとなった。
この様にタイトル画面ですら削ぎ落とすというギリギリの容量操作を経てこの名作は製作された。
販売本数
本作の売上本数は380万本を記録。
この数字は2006年(平成18年)11月頃まで他社の作品を含めた日本の歴代ゲーム売上本数でも十傑に入っている。
この記録はドラゴンクエストシリーズでは『ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人』『ドラゴンクエストⅦ エデンの戦士たち』に続き3位。
尚、シリーズナンバリングタイトルの詳しい販売売り上げは下記の通り(2018年1月現在・リメイク版は除く)
【歴代ナンバリングタイトル売り上げ本数順位】
ドラクエ9:430万本
ドラクエ7:417万本
ドラクエ3:380万本
ドラクエ8:370万本
ドラクエ6:320万本
ドラクエ11(DS&PS4):308万本
ドラクエ4:310万本
ドラクエ5:280万本
ドラクエ2:240万本
ドラクエ1:150万本
ドラクエ10(Wii&WiiU):100万本
ゲームが今ほど世間に認知されていない昭和でありながら380万本を売り上げたのはまさに驚異的である。
さらにファミコンソフト全1252本の売り上げ順位でも歴代第3位を記録している。
【歴代ファミコンソフト売り上げ本数Best10】
スーパーマリオブラザーズ:681万本
スーパーマリオブラザーズ3:384万本
ドラゴンクエスト3:380万本
ドラゴンクエスト4:310万本
スーパーマリオブラザーズ2:265万本
ゴルフ:246万本
ドラゴンクエスト2:240万本
ベースボール:235万本
麻雀:213万本
プロ野球ファミリースタジアム:205万本
こうして見るとドラクエ人気は凄まじい。
スーパーマリオシリーズには敵わなかったが、それでもシリーズ4作中(ドラクエ5はSFCでの発売)3作がBest10入りは素晴らしい実績だ。
因みにドラクエ1は150万本で歴代21位である。
社会現象まで巻き起こしたドラクエ3発売騒動
大人から子供まで、そして海外でも大人気だったスーパーマリオシリーズに比べRPGという人を選ぶジャンルであり、海外では人気がなくほぼ国内だけの売り上げで380万本を売り上げたドラクエ3。
発売日前日には販売店の前に徹夜の行列ができた。
前日から並んだ行列が最終的に1万人を超える長大な規模になり、マスコミのみならず、後に学習歴史漫画にも取り上げられた。
学校を無断欠席してまでソフトを買いに来る児童・生徒が補導され、品切れで買えなかった少年らによる窃盗や恐喝などの犯罪も多発した。
この社会現象すら巻き起こしたドラクエ3発売のエピソードの詳細は、特集記事にてより詳しく紹介しているので興味があればそちらも読んで欲しい。
当時をリアルタイムで過ごしたゲーマーとしてはスーパーマリオより断然ドラクエ3の発売の方がお祭り騒ぎ感があり発売日にソフトを手に入れる難易度も格段に高かった記憶がある。
のちのゲーム雑誌『ファミ通』の15周年・20周年読者投票企画ではドラゴンクエストシリーズ中では最も上位だった。
発売後にはゲームブック化、小説化、ドラマCD化も行われている。
今ではかなりの市場を築いているエニックス(現スクウェア・エニックス)の出版事業ではあるが、最初に手がけたのは本作ドラクエの公式ガイドブックである。
もちろん筆者も持ってます。完全保存版として。
ちなみにパッケージなどに記載されているタイトルロゴは、ロゴ全体が剣の鍔と持ち手を模したものであるため、ナンバリングタイトルで唯一『DRAGON QUEST』の「T」が剣の形になっていない(リメイク版は剣の形になっている)。
また、『ドラゴンクエストⅥ 幻の大地』までの作品の中では唯一タイトルとナンバリングを表す数字が重なっていない作品でもあった(リメイク版では重なっている)。
おきのどくですが ぼうけんのしょ1ばんは きえてしまいました。
前2作は復活の呪文と呼ばれるパスワード方式を採用していたが、今作はデータが膨大になり仮にドラクエ3を復活の呪文にした場合800文字以上のパスワードになる為、現実的では無く廃止となった。
代わりにデータ保存方式が、内蔵電池によるバッテリーバックアップ方式に切り替えられ、最大3つまでの「冒険の書」としてROMカセット内部に進行状況を記録できるようになった。いわゆるセーブシステムの導入である。
これによって、地獄のような復活の呪文からプレイヤーは解放され、簡単にセーブできるようになったことに歓喜した。
しかしこのシステムは破損したセーブデータを自動で削除する機能が備わっており、接触不良で読み込めなかっただけのデータも破損とみなす為、特に問題のないセーブデータも削除してしまった。
しかもその誤認削除の確率が半端じゃなく高かった為、至る所でプレイヤーの絶望が撒き散らされた。
データが消えた際の真っ暗なテレビ画面に表示される「おきのどくですが ぼうけんのしょ◯ばんはきえてしまいました。」というメッセージ、同時に流れる不気味なジングルはプレイヤーに前2作の「じゅもんが ちがいます」と同等のトラウマを刻みつけた。
そして伝説へ…
発売前からドラクエ3情報に夢中になり、いざ発売されると社会現象まで巻き起こした伝説の名作『ドラゴンクエスト3』。
発売してから1ヶ月くらいは筆者の小学校でもドラクエ3の話題一色だった。
インターネットがない時代なので攻略情報は友達の口コミかファミコン情報雑誌だけであった。
各ファミコン情報雑誌はどれもドラクエ攻略記事を目玉にしていて、子供達は毎週雑誌が発売されるのを楽しみにしてた。
その後数々のリメイクが発売されたが、オリジナルが素晴らしいのでどのリメイク版も好評であった。
筆者にとってもファミコンソフトの中で1番思い出に残っているゲームである。
現代では大人になった僕たちが目を輝かせて冒険したあの日々。
今でもドラクエ3のことを思い出すと少年だったあの頃にすぐ舞戻れる。
ドラクエ3が発売されてちょうど今年で30周年。
あの頃僕らを熱狂させたファミコンソフトは歴史に名を残すゲームとなり、そのタイトルの如く「そして伝説へ…」となった。
今回は「ドラゴンクエストⅢ そして伝説へ…」の紹介でした。
あわせて読みたい