1994年11月25日にスーパーファミコン用ゲームソフトとしてチュンソフトより発売されたサウンドノベル。
「弟切草」に続く同社のサウンドノベルシリーズ第2弾である。
のちに数多くの機種に移植される事になる。
背景の上に文章が表示され、時折現れる選択肢を選んでいくことで様々な物語が展開するサウンドノベル作品。
真冬の雪山のペンションを舞台に、そこで起こる不可思議な殺人事件の謎を解くことが目的だが、多数あるエンディングの関係から、目的とずれた結末を迎えることがあるのも特徴の一つである
- サウンドノベルとは
- 「かまいたちの夜」あらすじ
- 前作「弟切草」を上回る恐怖
- あなたのせいで、死体が増える
- 犯人はおまえだ…ッ!
- クリア後の追加シナリオが凄い!
- 続編とリメイク版
- ペンション「クヌルプ」
- 終わりに
- あわせて読みたい
サウンドノベルとは
サウンドノベルとはアドベンチャーゲームから派生したジャンルであり、スパイク・チュンソフトの登録商標です。
それまでのアドベンチャーゲームとは異なり小説をモチーフとしているため、区切られたメッセージウィンドウにではなく画面全体にテキストが表示されるのが特徴です。
音響はBGMの他に雨や虫の声などの環境音を流し、テキストの表示に合わせ効果音や悲鳴などを鳴らす事により臨場感がを高め、より一層物語に没頭できるよう演出されています。
世界初のサウンドノベルゲームは1992年3月にチュンソフトから発売された「弟切草」です。
弟切草の大ヒットを皮切りに続々サウンドノベルが発売されました。
そのほとんどはホラー要素を含むミステリー系の物語ばかりでした。
ミステリーとサウンドノベルの相性が良かったのもありますが、弟切草の影響でユーザーがサウンドノベルに恐怖を求めたということも大きく影響しているのでしょう。
弟切草:1992年
ドライブ中に事故を起こし、古びた洋館にたどり着いた主人公とその恋人・奈美が館の中で様々な体験をする。
選んだ選択肢によってストーリーや人物像が大きく変わるのが特徴。
サウンドノベルの名称の通り、ドアの開閉の音や水槽の水の音など実際の生活音をサンプリングして使用していることで、臨場感を高めている。
魔女たちの眠り:1995年
原作は赤川次郎の「魔女たちのたそがれ」
主人公はどこにでもいる平凡なサラリーマン。
ある日、会社のデスクに電話がかかってきた。その内容は女性の声で、「助けて…殺される。」というものであった。
翌日彼は奇妙な夢で目が覚めるが、その後で新聞の記事により電話の声の主は子供の頃の幼馴染だった女性とわかる。
主人公は彼女が教師をしていたという分校がある山奥の村へと車を走らせるが…
学校であった怖い話:1995年
ある高校の新聞部に所属している主人公は、旧校舎が取り壊されることを記念して企画された「学校の七不思議の特集」のために学校内で語り継がれる「怖い話」の取材を任されることになる。
取材当日の放課後、主人公は新聞部部室に集められた7人の語り手から話を聞く予定だったが、そこにはなぜか6人しかいない。そして、まだ来ない1人を待たず、6人の語り手が語る、学校であった怖い話が始まった…。
夜光虫:1995年
チュンソフト以外のメーカーから発売された初めてのサウンドノベルである。
陸を離れ半年間の航海に出た貨物船ダイアナの船長を主人公とした物語。基本シナリオは「近藤編」「密航者編」「殺人蜂編」の3種類あるが、各エンディングバリエーションは多くない。
「かまいたちの夜」あらすじ
大学生である透は、ガールフレンドの真理にスキー旅行に誘われ、彼女の叔父である小林夫妻が経営しているペンション「シュプール」に滞在する。
吹雪が止まぬ中、シュプールにはアルバイトの他、OL3人組や、関西人の社長夫妻など様々な人物が宿泊しており、中にはその場に似つかわしくないサングラスをかけたヤクザ風の男・田中一郎もいた。
夕食の後、OL3人組の部屋で「こんや、12じ、だれかがしぬ」という一文の書かれた手紙が発見されるが、その場では誰かのイタズラだと一蹴される。
しかし夜9時を過ぎた頃、2階からガラスの割れる音がしたため、一同は2階の部屋を調べると、田中の部屋でバラバラになった田中の惨殺死体を発見する。
部屋の窓は割れたまま開け放たれており、犯人の姿はなかった。
小林は警察に通報しようとするが、電話線が切れているようで繋がらず、外は猛吹雪のため外出も出来ず、完全に閉じ込められた形になった。
前作「弟切草」を上回る恐怖
筆者はチュンソフトのサウンドノベルとしては初作である「弟切草」もかなりハマっていました。
しかし続編である「かまいたちの夜」は前作を上回る衝撃でした。
呪いや幽霊といった類が出てくる弟切草とは毛並みが違い、現実の世界を舞台にした連続猟奇殺人事件。次々と殺されていく宿泊客。
犯人が誰分からない為それぞれが他の客を疑い、疑心暗鬼の中で磨耗していく考察力と精神力。
まさに息もつかせぬ展開で常にビクビクしながらも頭をフル回転させてゲームを進めていかねばならぬ緊張感は堪りません。
まだインターネットも普及してない時代です。発売直後であれば攻略もネタバレも一切耳に入らず、望んでも知ることもできません。
そんな環境で手探りにてプレイするのが最高でした。
サウンドノベルは「ストーリー」「BGM」「演出(効果音)」で全てが決まると言っても過言でありません。
原作は推理作家の我孫子武丸。サウンド作曲は中嶋康二郎、加藤恒太。プロデューサーは中村光一。
今となればヒットして当然の錚々たるメンバーですね。
24年前のゲームなのでプレイしたことは無い方もいると思いますが、かまいたちの夜のBGMは、現在でもワイドショーや報道番組のBGMとしてよく使用されていますので恐らく耳にした事があると思います。
サウンドトラックは今聴いても素晴らしい楽曲の数々なのでゲームサントラファンにはお勧めです。
あなたのせいで、死体が増える
このキャッチコピー秀逸過ぎますよね。
初めて目にした時寒気すら覚えました。一瞬で必ずプレイしてやろうという気持ちにさせられキャッチコピーの大切さを知らされました。
プレイヤーとその彼女の名前はあらかじめ設定されている「透」と「真理」でスタートするのもいいですが、リアルの自分の名前と彼女の名前に変更すると臨場感が更にアップするのでお勧めです。
このゲームは基本的には挿絵と画面に表示されるテキストを読み進めながら進行していきます。ただ要所要所に選択肢があり、プレイヤーの選択によりストーリーが変化していくというシステムです。
マルチエンディングの大半はバッドエンドであり、初見では犯人がわからぬまま自分も殺されてGAME OVERになる事が殆どです。
最初の殺人は必ず起こるのですが、そのあとの選択で自分が次に殺され即ENDになる事もあれば、次々と宿泊客が殺されていき最後は自分も…というENDもあります。
ただ、いずれのBAD ENDもプレイヤーに真犯人の正体は明かされずに物語は幕を閉じるので真ENDまで犯人は判りません。
マルチエンディングと言っても基本ストーリーは1本のシナリオから書き起こされているので犯人自体が変わったり、トリックが差し替えられることはありません。
その為バッドエンドを体験するたびに「アイツが怪しい?」とか「あの時の原因はコレか!」など真実に近づいていくのが面白く、また最初からプレイするのが楽しみになります。
犯人はおまえだ…ッ!
そしてとうとう真犯人に辿り着いた時、最後に犯人を告発するシーンはクライマックス感最高潮です!
筆者はこのシーンに来るまでに10回くらい死んだヘボ探偵でした(笑)
この名前入力も一回間違えてまさかのBAD ENDになりました。
何度も繰り返しプレイしてとうとう犯人を暴き捕縛してクリアした時は感涙でした。
ちなみに5人も6人も殺されてから犯人の正体に気付きクリアしたのですが、犯人とトリックさえ解ってしまえば、犠牲者は最初に殺害される1人だけで済ます事もできます。
全ての謎を推理で解き明かし、証拠はあらかじめ押さえておき、宿泊客全員を談話室に集めひとつひとつ説明していきます。
そして最後に「こうやって犯人はアリバイを偽造して見事に殺害をやってのけたのです…そうですよね?◯◯さん?」と犯人を暴くシーンは鳥肌モノで、まるで自分が名探偵になった気分になり、一緒にいる彼女の熱い眼差しで快感に酔いしれる事ができます!(笑)
クリア後の追加シナリオが凄い!
犯人とトリックを暴きやっと到達する真ENDはとても感動します。
しかしこのゲームはクリア後が更に凄いんです。
メインシナリオ(ミステリー編)で真ENDを見る前も、死んで周回するたびに前回は無かった遊び心のある新たな選択肢が追加されていてクスリとさせられるのですが、メインストーリーをクリアした後は一気に追加シナリオが解放されるのです。
その追加シナリオの数の多さと種類の様々さはかなりのモノです。
鎌井達の夜編
宿泊客が偶然にも全員「カマイ」さんで盛り上がり楽しいペンションでの夜になる。
そして皆でテレビゲーム「かまいたちの夜」をプレイ。
電源を切ると自分たちの電源も切られて砂嵐画面に…
雪の迷路編
事故で車が動かなくなり、透と真理は猛吹雪の中を歩いてシュプールへ帰ることになります。
ただの迷路ゲームなので最初から紙とペンでマッピングしていけばすぐにシュプールにたどり着けます。
やっとの思いでシュプールへ到着したのに、待っていたのは悪夢であった…。
悪霊編
窓の外に視線を感じた透と真理は、小林さんから真冬に現れる幽霊の話を聞き出します。
そこへ幽霊の取材に来たフリーライターの美樹本さんが到着した直後、女性の悲鳴が響き渡る。
Oの喜劇編
完全にギャグストーリーです。
出演者が全員ボケまくりでまさに喜劇を見ているような気分で楽しめます。
スパイ編
主人公以外の宿泊客が皆それぞれ各某国のエージェント!?
え…!真理まで…!?
登場人物全員メインストーリーと性格豹変しすぎで笑えます。
暗号編
ガラスの割れた音に導かれて田中の部屋に辿り着いた透たちは、そこで血のついたメッセージを見つけます。
メッセージが宝のありかを示すヒントだと考えた一同は、宝探しを始めるのでした。
不思議のペンション編
暗号編の隠しメッセージ表示後に出現する最後のシナリオ。
不思議のペンションに迷い込んだ透と真理は「しあわせの箱」を見つけるため、誰も生還したことがないという迷宮へと降りて行く。
ピンクのしおり&金のしおり
一定数のシナリオをクリアするとセーブ選択画面のしおりの色がピンクになり、一部既存シナリオにエッチな展開が追加されます。エロいです!子供には刺激が強いかも(笑)
そして「全シナリオのエンディングを見る」「全ての選択肢を選ぶ(犯人入力含む)」「全てのメッセージを見る」の全てを行うと金色となり、その画面の写真を撮ってチュンソフトに送ると「ちょっとエッチなかまいたちの夜」のドラマCDが貰えたそうです。
これは滅茶苦茶骨が折れますね…(笑)
画像をキャプチャーしてメールで送信ではなく、テレビ画面をカメラで撮って現像した写真を封書で郵送すると言うところが時代を表していて良いですよね。
PS版以降の移植版は不思議のダンジョン編の真のエンディングを見る事ができればしおりは金色となりました。
続編とリメイク版
PlayStation版&ゲームボーイアドバンス版
SFC版の4年後の1998年にPS版が、その4年後の2002年にアドバンス版が発売されました。
グラフィックをよりリアルに、よりクリアにして振動機能も追加されました。
一度見たシーン(選択肢含む)が記録され、フローチャート画面にて自由にシーンを行き来することが出来るようになりました。
また、選んでいない選択肢も色分けされ、一目瞭然となっています。
このフローチャートの自由移動が本当に便利で、他のシナリオをプレイするのにわざわざ最初からやらずに分岐となる選択肢のシーンまで移動してそこから開始できるので随分と攻略が楽になりました。
かまいたちの夜2
2002年にPS2用ソフトで発売されました。
筆者もクリア済みですが名作であった前作には程遠いクオリティであり完全に期待ハズレなタイトルとなってしまいました。
かまいたちの夜3&真かまいたちの夜
2006年にPS2用ソフトとしてかまいたちの夜3が、2011年には真かまいたちの夜がPS3版とPSvita版で発売されました。
筆者は未プレイですが、評判がかなり悪く購入する勇気がありません。
かまいたちの夜 輪廻彩声
2017年にPSvita用ソフトとして無印のかまいたちの夜がリメイクされました。
オリジナル版は人物がシルエットでセリフはテキストオンリーだったところを、リメイク版はいわゆる萌え絵でキャラクターデザインされ声優によるフルボイス化となっています。
筆者の世代のかまいたちファンにはちょっと衝撃的であり、すんなりと受け入れられるリメイクではありませんでした。
そのため筆者は購入は見送ったのですが、ネットの評判を見るとキャラデザとフルボイスに関してはさほど違和感なく楽しめているユーザーが多いようで、機会があれば今度プレイしてみようかと考えています。
※2018年6月21日追記
「かまいたちの夜 輪廻彩声」購入してプレイしました!
可愛いキャラ絵と声優によるフルボイスは、シルエット描写とテキスト表記だったオリジナル版に比べると恐怖感は劣ります。
しかし別物のゲームとして捉え、ライトノベル推理ADVをプレイするつもりで遊ぶと結構楽しめました。
詳細は下記の記事をご覧下さい。
ペンション「クヌルプ」
このおぞましい連続殺人が起こるペンション「シュプール」ですが、なんと実際に長野県の白馬にあるのです。
ペンションの名前はKNULP(クヌルプ)といい、かまいたちの夜スタッフがゲームを制作する際に取材をしてモデルにしたとの事。
談話室などゲームのまんまです。
ソファには香山さんやOL3人組が座っている姿が目に浮かびます。
レストランもゲームと全く一緒です。
ゲームにも登場するミシシッピーマッドケーキもメニューにあるそうです。
客室です。ここに惨殺死体が…
考えるだけで恐ろしい。
かまいたちの夜ファンとして必ずいつか宿泊に行きたいと思ってます。
その際はカメラでゲーム画面の構図全ての写真を撮影してきて記事にします(笑)
終わりに
チュンソフトによりADVのジャンルにサウンドノベルという新たなカテゴリが生み出され26年の歳月が経ちます(2018年現在)
その間たくさんのサウンドノベルゲームが発売されてきましたが、未だにこのかまいたちの夜を超えるタイトルは無いと筆者は感じてます。
それほどサスペンスとサウンドノベルの相性は抜群で、本タイトルのストーリーが秀逸だったと言う事でしょう。
時代が流れ、ゲーム技術も日進月歩の勢いで進化しています。
臨場感も音響も当時とは桁違いでありVRなんて物も生み出されている昨今、サウンドノベルというジャンルの役割は終わった様に思います。
しかしサウンドノベルが切り開いてきたアイディアやコンセプトは現在のADVに間違いなく引き継がれていると考えています。
VRなどでこの作品を超える名作が世に出てくる事をADVファンとして望みます。
今回は『かまいたちの夜』の紹介でした。
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