『かまいたちの夜 輪廻彩声(りんねさいせい)』は2017年2月16日にPlayStation Vita用ゲームとして5pb.より発売されたサウンドノベルゲーム。
オリジナルの開発元であるスパイク・チュンソフトは監修のみで本作の販売には携わっておらず、公式サイトも5pb.側のみに存在する。
2018年2月23日に、PC移植版『輪廻彩声』が発売された。
かまいたちの夜とは
1994年にスーパーファミコン用ソフトとして発売されたチュンソフト(のちのスパイク・チュンソフト)のサウンドノベル。
オリジナルの『かまいたちの夜』は歴史に残る最高傑作といわれる。
雪山のペンションを舞台に起こる殺人事件を描いた「ミステリー編」を基本に、時折現れる選択肢を選んでいくことで様々な物語が展開する内容である。
当記事ではリメイク版『輪廻彩声』のオリジナル版との比較・変更点と新たな追加点についてレビューします。
『かまいたちの夜』の基本情報はオリジナル版の記事をご覧下さい。
シルエットから萌え絵へ
原作ではキャラクターが青いシルエットで表現されていたが、5pb.によりリメイクされた輪廻彩声では2010年代のライトノベル世代向けのイラストによって表現され、ストーリーは声優によるフルボイス化がされている。
キャラクターデザインと原画は有葉が担当。
キャラクターデザインがオリジナル版で採用されたシルエット描写ではなく、いわゆるギャルゲータッチのビジュアルとなり発表時は旧作のファンからの批判が噴出、キャラクターデザインを担当した絵師「有葉」にも批判が殺到してしまうなど悪い意味で話題になってしまった。
筆者もオリジナルの「かまいたちの夜」は大ファンでかなりやり込んだクチなので不満を言うユーザーの気持ちも解るが、デザインを依頼された有葉氏まで批判するのはどうかと思った。
筆者も購入したが、オリジナルの「かまいたちの夜」とは別物と思ってプレイしたら意外と楽しめたよ。
SFC版と比べるのでは無く、新鮮な気持ちで可愛い女の子たちとペンションで殺人鬼に怯えるADVを楽しむなら十分に購入の価値ありと思いました(笑)
登場人物
透
本作の主人公。フルボイス化にあたり名前入力はできなくなっており「透」で固定。
同じ大学に通う真理と一緒にスキー旅行にやってきた。
真理に好意を抱き果敢にアタックしているがはっきりとした反応が返ってこず、曖昧な関係に留まっている。
小林真理
本作のヒロイン。フルボイス化にあたり名前入力はできなくなっており「真理」で固定。
雪国育ちでスキーが上手く、叔父が信州で経営するペンションに誘う。
透のことを憎からず思っているものの、はっきりとした胸の内はまだ不明。
長い黒髪の美人。
小林二郎・小林今日子
ペンション「シュプール」のオーナー。
脱サラしてペンションを開業する真理の叔父とその妻。
久保田俊夫・篠崎みどり
シュプールのでアルバイトをしている雪焼けして肌はやや浅黒い男性と、明るい性格のポニーテールの女性。
渡瀬加奈子・河村亜希・北野啓子
ペンションシュプールに宿泊している18歳のOL三人組。
香山誠一・香山春子
シュプールの宿泊客で大阪からやって来た会社社長の男性とその妻。
美樹本洋介
シュプールの宿泊客でフリーのカメラマン。髭をたくわえている。
シナリオ構成・追加シナリオ
収録シナリオはほぼ原作のPS版に準拠している(「真理の探偵物語編」も収録)が、「悪霊編」が「オカルト編」、「不思議のペンション編」が「迷宮編」に改題されている。
更に、PS版発売後の携帯アプリ版より追加された「かまいたちの夜 A Novel」と、「竜騎士07」執筆による本作書き下ろしの完全新規シナリオ「辺獄の真理編」が追加されている。
A Novel
シェプールで楽しい夜を過ごした翌日、宿泊客の一人が死体で発見された。
外部からの侵入の痕跡はなく、犯行は内部犯によるものと推測され、客と従業員はお互い疑心暗鬼に陥る…。
モバイルアプリ版の限定シナリオ。
元々は書籍「かまいたちの夜 公式ファンブック」に収録された我孫子武丸の書き下ろし短編小説をサウンドノベル化したもので一切の選択肢はなく一本道。
前半が出題編、後半が解答編となっている。
公式ファンブックも未読であり、アプリ版かまいたちの夜もプレイしてない筆者にとってはこのシナリオが収録されているのは嬉しかったな。
ミステリー編などに比べるとボリュームは少ないが、流石は我孫子武丸氏書き下ろしというだけの事はあり楽しく読めた。
辺獄の真理編
シェプールの客室で目覚めた透は、全ての記憶をなくしていた。
真理やシェプールの人々と交流する中で、透は周囲の状況に次第に違和感を覚えていく…。
PlayStation Vita版『輪廻彩声』にて追加された、透と真理にスポットを当てた新たなシナリオ。
「辺獄の真理編」は霊界や魂の話であり、オリジナルの「かまいたちの夜」とは随分と毛並みが違うストーリーではあるが、中盤から終盤にかけての展開は感涙ものでありラストのくだりでは号泣してしまった。
めちゃくちゃいい話で余韻からしばらく抜け出せなかったくらい。
かまいたちファンなら一度プレイしてみるべきかも。
ちょっとエッチなかまいたちの夜
また、当時はドラマCD版キャストによるボイスドラマであった「ちょっとエッチなかまいたちの夜」は本作のキャストによる再収録が行われている(本作でも同様に音声のみ)。
実は筆者はまだ輪廻彩声はピンクのしおりまで進めていない。
全エンディングの解放は、いくらPS版と同じシナリオのフローチャート移動が実装されてるとはいえ、結構な作業量でありなかなか大変なのだ。
とは言ってもだいぶシナリオ攻略は済んでおりあと3つ程エンディング解放すれば金のしおりまでいけるので、連休などで時間がある時一気にクリアして絶対にフルボイス版の「ちょっとエッチなかまいたちの夜」は聴くつもりだ(笑)
総評
ミステリー要素を全面に押し出し、プレイヤーを恐怖のドン底に突き落とす前作かまいたちの夜に比べ、恐怖感は半分以下になっている。
ストーリーや演出などはオリジナルを踏襲しているが、やはり萌え絵でキャラが描かれている為だと思われる。
前作のシルエット描写が如何に想像力を掻き立てられる秀逸な手法だったかを再認識させられた。
実際にバラバラ死体や惨殺死体もカラーである今作の方がリアルに感じるはずなのに、モノクロ描写だった前作の方が怖く感じた。
それと前作をやり尽くしたユーザーは殺人がいつどの様に発生するかが分かっている為、心の準備ができているという事も恐怖感の軽減の原因になっているとも思える。
SFCで『かまいたちの夜』 が発売されて24年が経過している現在ならこのゲーム自体をプレイしたことが無い方もいると思うので、そのような若い世代の方ならこの『輪廻彩声』から始めても恐怖を感じることができるかもしれない(それでもオリジナルのシルエット描写には敵わないと思うが…)。
逆に『かまいたちの夜』最大の売りである恐怖感を求めるのをやめ、ライトノベル風推理ADVとして楽しむつもりでプレイすると、オリジナル版とは全く違ったゲームとして楽しむことができる。
前作はシルエット描写であったのと極度の緊張感の中でのプレイだった為、恋愛要素的な感情を抱く精神的余裕が無かったが、今作は有葉の描く可愛らしい真理と声優によるフルボイス演出により、感情移入しながら恋人同士の会話を楽しむことができた。
筆者としては今作『輪廻彩声』は前作のイメージを全て忘れ、ちょっぴり怖い恋愛探偵物語としてプレイするのがこのゲームの正しい楽しみ方だと思う。
古参ファンから散々ボロクソに言われた本タイトルだが、固定概念に捉われず上記のように気楽に楽しむことができるなら案外捨てたものじゃないと言うのが筆者の総評です。
今回は『かまいたちの夜 輪廻彩声』の紹介でした。
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