『トワイライトシンドローム』はヒューマンからPlayStation用ソフトとして、1996年3月1日に『探索編』が、1996年7月19日に『究明編』が発売されたホラーアドベンチャーゲーム。
『探索編』と『究明編』は対になっており、『探索編』は謎を残したままエンディングを迎え、『究明編』ではそのエンディングから直接続くストーリーが展開されるという、いわゆる前後編仕様になっている。
また、『探索編』と『究明編』をカップリングした廉価版『TWILIGHT SYNDROME Special』が同社から1998年7月2日に発売された。
あらすじ
1996年、夏。
武蔵野市の外れにある雛城町は、古きよき面影を色濃く残す土地である。
長谷川ユカリ、逸島チサト、そして岸井ミカが通う都立雛城高校もまた、鉄筋コンクリート製の新校舎の背後に、昭和の遺物である木造の旧校舎をしたがえている。
その旧校舎に存在するのは、霊が現れるという得体の知れない噂……。
ユカリ、チサト、ミカの三人は、不穏な噂が漂う雛城町内の心霊スポットを探索し、その真偽を究明する。
かつては雛代と呼ばれ、長い歴史を誇るこの土地には、その歴史の分だけ、そこに生まれ、死んでいった人々の想いもまた生き続けている。
そして、それらの思いは何も、いいものばかりであるとは限らない。
そこには喜びもあれば、怒りや悲しみも存在するのだ。
夜の町は昼間から一変、全く違う様相を見せる。
ユカリ、チサト、ミカの三人が足を踏み入れる数々の心霊スポットもまた、夕闇を経て、この世のものではない風景を見せるのだ…。
ゲームシステム
心霊現象に関する噂を解く、その真偽を確かめるべく、キャラクターを操作して横スクロール型のフィールドを探検していく。
シナリオは分岐型になっており、探索中に取った行動によって結末が変化する。
選択肢によって、“大吉”・“中吉”・“凶”の三つの結末に分岐する。
大吉なら噂の真偽は完全に究明され、次のシナリオに進む事が出来る。
中吉なら事件に一定の解決はみられるものの、真相は最後まで分からずじまいで終わる。とはいえ、次のシナリオに進む事は出来るのだが、“凶”に至っては真相が明らかにならないまま、ゲームオーバーとなってしまう。
探索にともなって様々な心霊現象が起こるが、それらの現象を撮影、または録音する事が出来る。
得られた写真や音声は、クリア後に戦利品として閲覧する事が出来る。
また“フライトレベル”と呼ばれるものがある。
画面上部に表示される心電図のようなウィンドウ画面がそれで、主人公達が現時点でどれほどの恐怖を覚えているかが表される。
ショッキングな場面に遭遇する度、心音と共に恐怖が蓄積されていき、不用意な行動を繰り返していると恐怖が臨界点を超えてしまい、気絶、あるいは死亡し、ゲームオーバーとなってしまう。
登場人物
長谷川ユカリ
ある事情で退部してからは特定の部活には参加しない、いわゆる帰宅部で通している。
一年生の夏頃、それまで不仲だった両親がついに離婚してしまい、それ以来、部活も辞め、冷めた現実主義者を装っているが、それは繊細な内面を隠すためのものに過ぎない。
実はとても感受性が強く、それゆえに不安定な面もあり、意固地になってしまう事も多い。
逸島チサト
雛城高校に通う二年生で、クラスは2-C。弓道部に所属している。
厳格な父親の元、三人姉妹の長女として育てられた、今時カラオケにも行った事がない古風な少女。
同じクラスの長谷川ユカリとは九年来の幼馴染。
霊感が備わっており、度々、普通の人間には見えないものが見えるらしい。それゆえにユカリから頼まれて、心霊スポット探検に参加する事となる。
他人の非を責めるより先に、自分に非がなかったかを省みる思慮深い性格で、探索の際は、ユカリやミカのアドバイザー的役割を果たす事が多い。
岸井ミカ
雛城高校に通う一年生で、クラスは1-D。バドミントン部とラクロス同好会に所属している。
両親と兄との四人家族で育った、常に最新の流行を追いかける今時の少女で、誰よりも先に刺激的な噂をつかみ、それを広めるのが生きがいとしている。
そんなミカが新たに目をつけたのが、雛城高校の旧校舎に現れるという霊の噂で、彼女はその探索の仲間として、職員室で偶々見かけたクールな先輩・長谷川ユカリに白羽の矢を立てたのだった。
しかしながら大抵の場合、ミカの発案した探検計画のよりどころとなった大本の噂の真偽が曖昧であるがために、予期せぬトラブルが起こってしまう。
シナリオ
探索編
はじまりの噂
雛城高校二年のユカリは、見ず知らずの一年後輩・ミカに誘われ、真夜中の旧校舎を探検する羽目になってしまう。
ミカの話によれば、真夜中の旧校舎の女子トイレにはおかっぱ頭の少女の霊が現れるというのだが…。
ユカリは、ミカの他に、霊感を持つ幼馴染・チサトを誘い、旧校舎の探検に出発する。
第一の噂 心霊写真量産公園
友人・キミカが持ち込んできたある心霊写真に、ミカは興味を覚える。“居の頭公園”で撮影されたその写真には、被写体であるキミカとその恋人の首を、まるで断ち切るかのような赤い光線が写りこんでいたのだ。
ミカに問題の写真を持ち込まれてしまったユカリとチサトは、その写真が本物の心霊写真であるか否かを確かめるため、夜の公園を探検する事になってしまう。
第二の噂 音楽室のM.F
雨が続くある土曜日、雛城高校の音楽室で、ある女子生徒が首を吊って自殺を遂げた。自殺した女子生徒・フジタマユミは噂によれば、音楽教師・奥野龍一と密かに交際していたという。
同じく教育実習生の北村カズヤと密かに交際しているユカリは、複雑な思いを抱きつつも、ミカ、チサトと共に、フジタマユミの霊が音楽室に現れるという噂の真偽を確かめる事になった。
第三の噂 最終電車
フジタマユミに関する騒動を期に生じ始めたカズヤとのすれ違い、そして母親とのギクシャクした関係にやりきれなさを覚えたユカリは、気分転換のためにミカへ声をかける。
ミカが最近仕入れた噂によれば、村山台駅ではここのところ、不自然な死亡事故や自殺が続発しているという。
心霊写真を撮影したいというミカに付き合って、ユカリ、そしてチサトは深夜の駅に忍び込むが…。
第四の噂 雛城高校の七不思議
友人から自身が仕入れる噂の信憑性を疑われたというミカが、またもユカリやチサトの元に怪しげな噂を持ち込んできた。
ミカは探検によって噂が真実である事を証明し、友人達を見返してやりたいようで、ユカリとチサトもそれに付き合う事を承諾する。
今回の探検の目的は、雛城高校に存在するという七不思議を確かめる事であった。
もう一つの噂
図書室の机に、文通相手を募る落書きを発見したミカは、友人達と共に面白半分で机に返事を書き始めた。
最初は悪戯心で始めた机上通信であったが、友人達が飽きてしまった後も、ミカはなぜかやめる事ができず、S.Hと名乗るその文通相手と机越しのやり取りを続けていったのだが、やがて、S・Hからの返事にだんだん不穏な気配が漂い始めた…。
究明編
第五の噂 雛城の杜
雛城高校の裏手にある形代山にて、S.Hとの机上通信を続けていたミカが、ユカリとチサトの目の前で忽然と姿を消した。
机上通信によってミカを形代山に呼び出した張本人であるS・H…姫神桜が、すでに三十年以上も前に死亡している事を知ったユカリとチサトは、ミカを見つけ出すための手がかりを求め、全ての始まりとなった図書室へ向かう。
第六の噂 夕闇の少年
雛城高校で、今年入学したばかりの男子生徒が自殺を遂げた。
自ら死を選んだ問題の少年…タタラキミヒコが、クラスメイトや部活仲間からいじめを受けていたという事はほとんど公然の秘密であったが、その死が全校生徒の知るところとなって間もなく、彼の幽霊が体育器具庫に現れるという噂が囁かれるようになった。
第七の噂 テレホンコール
真夜中の零時ちょうどにかかってきた謎の少女からの電話。
ユカリはそれをいたずら電話と思い、途中で切ってしまう。
翌日、その事をチサトとミカへ話すと、二人から思わぬ返事が返ってきた。
午前零時ちょうどにかかってくる電話は死者からの連絡だから、途中で切ってはならない、と…。
第八の噂 錆びた穽
ミカがまたも怪しげな噂をユカリとチサトの元に持ち込んできた。
それは、随分長い間放置されている雛城通りの工事現場に関するもので、工事が中止されたままになっているのは、そこで人骨が発見されたからとも、埋蔵金が発掘されたからとも噂されているという。
ミカの提案で、三人はその工事現場を実際に探索する事になったのだが、そこにあったのは人骨でも埋蔵金でもなく…。
第九の噂 オカルト・ミステリー・ツアー
かつて探索した事がある、旧校舎に現れるおかっぱ頭の少女の霊について、ミカが新たな噂を仕入れてきた。
それは、以前に試したものとは別のおまじないで呼び出すと、おかっぱの少女がどんな願い事でも叶えてくれるというもので、ユカリはミカの口車に乗せられ、チサトと共に、またしても真夜中の旧校舎へ忍び込む事となった。
第十の噂 裏側の街
ユカリの近所に住むチカコという幼稚園児が忽然と姿を消した。
神隠しだとの噂も飛び交う中、ユカリはなぜか、夢で見た少女の事が気にかかるのだった。
夢の中で、少女は繰り返しすべり台を滑っていた。
あるいはチカコの失踪と関係があるかのかもしれない…そう考えたユカリ、チサト、ミカの三人は、チカコが姿を消したという近所の公園を訪れる。
Prank
第一の噂から第十の噂までの各シナリオを“大吉”でクリアしたデータを同じメモリーカード内に保存しておいた場合にのみプレイできるシナリオで、続編『ムーンライトシンドローム』の予告編として、ゲーム中の一エピソード・“変嫉 HENSHITSU”の導入部が収録されている。
3D音響システムにより恐怖が倍増!
当時家庭用ゲーム機で導入されたのは日本で初めてではないかと思われる「3D音響」によるサウンド効果により、これまでに体験したことのない恐怖がプレイヤーを襲います。
今だったら東京ジョイポリスの立体音響ホラーアトラクションなどで使われているサラウンドシステムですね。
説明書には「よりリアルな臨場感を味わえるのでヘッドホンの着用をお勧めしいます」と書かれているが当時にしては珍しい事でした。
今でこそ5.1chサラウンドやホームシアターなどリアルを追求したサウンドシステムは多々ありますが、当時は音響が立体的に聞こえるなど想像すらできない時代でした。スピーカーが左右にある「ステレオ」で最先端だったんですから(笑)
初めて聴くそのリアルな3D音響にプレイヤーは悲鳴をあげるほど怯え、ヘッドホンを投げ捨てるほどの恐怖体験をしました。
筆者もその1人ですが、当時の事はまだよく憶えています。
あまりにも音響がリアルで怖過ぎて半泣きでゲームを進めました(笑)
ビクビクしながら深夜の旧校舎を歩いてたら、耳元で「お姉ちゃん…遊ぼう…」って突如囁かれるんですよ!めっちゃ怖いですよ!悲鳴もんですよ!
今となっては懐かしすぎる時代設定
巷にありそうな噂を本当にいそうな女子高生3人が、今時の語り口、実際にある流行のアイテム(MD・ポケベル・カメラ)を使って検証していく全く新しいタイプのホラーアドベンチャーゲームです。(とSONYの公式では紹介されています)
1996年と言えば22年前、平成8年の頃です(2018年現在)
確かにこの頃は「コギャル」と呼ばれるルーズソックスを履き語尾を伸ばして喋るスタイルが女子高生の間で流行っていて、登場人物のミカなどはまさにその描写でした。
ゲーム内ではMD(ミニディスク)と呼ばれる当時は次世代音楽記録方式としてお洒落アイテムだった機器を使用して超常現象の音や霊の声などを録音していきます。
そしてポケベルですよ、高校生は9割ほど持ってました。
この頃の女子高生の三種の神器といえば「ルーズソックス」「ポケベル」「プリクラ手帳」と言われるくらいポケベルは普及してました。
とにかく当時の時代を捉えたリアルな設定と演出で、それが怖さに拍車をかけてました。
また、時代の変革の中で薄れて行く過去の記憶、郷愁が呼び起こされる普遍的なテーマ性を持ったシナリオ群が秀逸でありプレイヤーからは高い評価を得ました。
ただ怖いだけではない、そのストーリーの中に漂うノスタルジックな雰囲気が素晴らしいホラーアドベンチャーの金字塔といっても差し支えないでしょう。
トワイライトシンドロームの続編
「探索編」のラストはミカが行方不明になるというとんでもない場面で終了となる。
ここで後編にあたる「究明編」が4ヶ月後に発売されることを知る。
探索編の発売時には前後編であることは伏せられていたためプレイヤーは度肝を抜かれた。
恐怖の中にもなぜか切なく懐かしいようなストーリーに惹かれて、怖くて仕方ないのに最後までプレイしてしまうホラーゲームの傑作と今でも名高い。
しかしその1年後、続編として発売された「ムーンライトシンドローム」(1997年)はトワイライトシンドロームが怪談系ホラーなのに対し、本格的サイコホラーに路線変更をし見事に失敗している。
そしてその2年後にシリーズの開発メーカーであるヒューマンが倒産する。
その後主な人気タイトルの権利はスパイクが取得する事になる。
スパイクにより事実上シリーズ最新作にあたる「トワイライトシンドローム 再会」(2000年)が発売されるが、筆者はメーカーが変わった事でなんとなくやる気を削がれ未プレイです。
2008年にDSから「トワイライトシンドローム 禁じられた都市伝説」が発売されている。
こちらは実は購入済みでまだ積んでいるので、今年の夏のソロキャンプで夜中にヘッドホンでプレイする予定なのでクリアしたらレビュー書きますね(ちょ〜怖そうw)
平成初期ホラーゲームの金字塔!
3D音響システムと恐ろしくも切ない感動的なストーリーで大ヒットし、今でもゲーマーの間で語り継がれるアドベンチャーゲーム。
是非一度プレイして貰いたいです。その時は勿論、ヘッドホンをお忘れなく。
この夏、あなたも背筋の凍る思いをしてみませんか…?
今回は『トワイライトシンドローム』の紹介でした。
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