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【死印】舞台は平成初期の東京都──。決して逃れられない「死」に抗い、怪異に立ち向かう切なくもおぞましい恐怖の物語。【PSvita・エクスペリエンス・レビュー】

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『死印(しいん)』は2017年6月1日にPSvita用ソフトとしてエクスペリエンスより発売されたホラーアドベンチャー。

キャッチコピーは「”シルシ”ってうわさ、知ってる?」。

2018年1月にはPS4に、2018年6月にはSwitchに、2018年10月にはXBoneにそれぞれ移植されている。

移植にあたってはハードのスペック向上に伴いグラフィックの高解像度化、新エピソード、イベントギャラリーが追加されている。

追加エピソードは後にVita版でも配信。

 

死印とは

90年代の東京都H市が舞台。

平成一桁を過ごした人は懐かしさを感じる時代設定。

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主人公は記憶をなくしている。

そしてその右腕には死へのカウントダウンを意味する謎の痣シルシを刻まれていた。

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章ごとに出会うシルシを刻まれた者たち、印人(しるしびと)と協力し、H市内で噂される正体不明の怪異の噂を調べていき、その元凶である怪異と対峙し打ち勝った時にのみそのシルシは消えるという…

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プレイヤーは主人公となり「逃れられない死への宿命」から生き残る術を必死に見つけ出すという、ホラーアドベンチャーゲームである。

 

あらすじ

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東京都H市、この郊外都市に最近奇妙な噂話が広がっていた。

“シルシ” を持つ者は死ぬ──

突如体にまるで噛まれたような痣 “シルシ” が刻まれ、 原因不明の死を遂げるというものだ。

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事実この町では、人が謎の不審死を遂げる怪奇事件が発生していた。
この事件は都市伝説的に、どこかで幽霊に遭遇したせいだ、知らぬ間に呪いに祟られるようなことをした、などと様々な憶測を元に広まっていった。

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記憶を失ったあなたは、 “シルシ” を持つ者を保護するという洋館の前にいた。
何かに引き寄せられる様に洋館の扉を開くと、そこで美しい人形に出会う。

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「ようこそ、九条館へ──」

続けて人形は語る。
「このままでは、あなたは死にます」
「ただ、助かる方法がない訳ではない」

“死” へのカウントダウンはすでに始まっていた…

 

第一章:花彦くん

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誰もいないはずの学校で鏡を見ると現れる異様な子供。

「ぼく、きれい?」と質問し、「はい」と答えると「赤いのちょうだい」と言い残して消える。

また、大人が嫌いで、質問相手が大人だった場合は体中の血液を抜かれ殺される。

死体の傍には、一輪の血に濡れた真っ赤な薔薇が残されている。

 

第二章:森のシミ男

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自殺や死体遺棄などの噂が絶えないH城樹海に出現する身体中に黒いシミがある大男。

出会ったものに「蜂が好きか?」と問い、「はい」と答えた者を笑いながら襲う。

 

第三章:くちゃら花嫁

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H市内のとある電話ボックスに現れる花嫁姿の幽霊。

電話に出ると「くちゃくちゃ」という不気味な音を鳴らし、「あなた見たの?」と聞いてくる。

「見てない」と答えた者は見たいものを聞かれ、探し物の在り処等を教えてくれる。

 

第四章:ずう先生

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元研究員であり、H小学校の元教員てもある白衣を着た女幽霊。

教員時代は理科室で多くの実験動物を飼っていたため、生徒からはずう(Zoo)先生と呼ばれていた。

 

第五章:観音兵

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第二次世界大戦の末期、シルシらしき痣の付いた者たちが陸軍の秘密研究所に集められ開発していた何か…

その開発はおぞましき方法で成されていた。

実験台となった者の怨念は何十年もの時を経ても未だ世の中を呪う悪霊となる。

 

【追加エピソード】第六章:雨の赤ずきん

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雨の日、K市内のホテル街に出現する赤いレインコートを着た少女。

客引きだと勘違いして一緒にホテルに入った者は行方不明になる。

行方不明になった者たちは、しばらくして正気を失った姿で発見され、自殺を遂げるなど悲惨な最期を迎える。

 

登場人物

八敷一男

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本作の主人公。

名前変更可能であり、筆者は「八敷ゼル」という名前でプレイ。ちゃんと物語中も「ゼルさん!」とか呼んでくれる(笑)

右腕の手首にシルシがある記憶を失った中年男性。

何かに誘われる様に九条館にたどり着いた。

その後は、メリイの指示に従い様々な印人と協力し、シルシの付いた原因を探る事となる。

 

メリイ

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九条館の当主・九条サヤに命を与えられた美しい西洋人形。

意志を持ち喋ることができる。

亡くなった主人に変わり、主人公達をサポートする。めっちゃかわいい。

 

渡辺萌

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オカルト好きの女子高生。

少々変り者だが、いつも明るく快活でマイペース。

H小学校でシルシをつけられ、霊能者である九条サヤの助けを求めて九条館へ現れる。

五円玉のネックレスが気になる。

 

吉田つかさ

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名門私立小学校に通う大人びた小学生男子。

裕福な家庭で育ち、誰にでも丁寧で礼儀正しいが、危険が迫ると本性が顔を覗かせる。

キレた時の顔怖すぎ。

 

真下悟

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不祥事を理由に免職された元刑事。

免職後も個人的にH小学校の疑惑を追い続け、そこで怪異にシルシを刻まれた。

ぶっきらぼうで冷たい物言いしかできないが、実は良い奴で戦闘能力は印人随一と言える。

喋り方から雰囲気まで全てがリヴァイ兵長っぽい。

 

長嶋翔

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怪我で高校野球を断念せざるを得なかったために不良となった元高校球児。

仲間思いで正義感もあるが、心霊体験には弱く、九条館には怯えて助けを求めに来た。

お化けが怖い不良、かわいい(笑)

 

有村クリスティー

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不倫騒動で降板を余儀なくされた元人気ニュースキャスター。

自殺するためにH城樹海を訪れていた。

霊感が強く、不思議な声や霊らしき影を見ることができる。

滝川クリステルがモデル?

 

森宮すず

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強い霊感を持つ小学生。

複雑な環境に育ったため、とても大人びた性格をしている。

守ってあげたくなる儚げな少女。

 

中松栄太

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33歳無職。

電子掲示板中毒のオカルトマニア。

月間「オーパーツ」の読者投稿欄で知り合った森宮に兄のように慕われている。

着てるTシャツのアニメキャラは「NAMU」ちゃん。

 

柏木愛

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H市を拠点に活動しているローカルアイドルグループ、「ラブ&ヒーロー」の中心メンバー。

正義感が強く、曲がったことが大嫌い。

特技はピアノの演奏で弾き語りもできる。

某48人のメンバーがモデルか?

 

安岡都和子

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年齢不詳の著名な占い師。

銀座の一等地に店を構え、顧客には政治家もいるなど信奉者は多い。

腕のポーズが気になるのは筆者だけでしょうか?

 

広尾まどか

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大手製薬会社に所属する研究員。

冷静沈着な理性の信奉者で、オカルトには極端な拒否反応を示す。

隠キャっぽいけど実はイケイケなキャラ。

 

大門修治

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軍医中佐だった祖父の影響で医師を志し、H市でクリニックを営む。

腕は良いものの患者や医療に対してドライで、あまり評判は芳しくない。常に顔色が悪い。

こんな見た目なのに頼りになるし、男気ある奴。

 

バンシー伊東

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H市地下壕に居住しているホームレスの老人。

同所に関しては非常に詳しい。

また、霊視の類の力も持っている。

お調子もんでしたたかな爺。個人的にすごい好きなキャラ(笑)

 

ゲームシステム

探索・調査

物語は各章ごとにプロローグから始まり、舞台となる心霊スポットへの探索、調査に向かう流れである。

その際に物語に関わる印人を1人指名して同行させることになる。

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調査はオーソドックスなテキストアドベンチャーに加えて、ダンジョンRPG風のマップ移動によって行われる。

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場面ごとに、コマンドで状況を細かく調査したりアイテムを使用して謎を解きながら物語を進めていく。

同行させる印人も、特定の印人にのみ物語が進行するというパターンもあるので、物語に行き詰まったら一度九条館に戻り同行する印人を別の者とチェンジさせてみるのもいいだろう。

 

デッドリーチョイス

物語を進めていくと突如怪奇現象に見舞われ「デッドリーチョイス」という、制限時間内に正解の選択肢を選ばないと霊魂(HPのようモノ)が大幅に削られる、あるいは即死するイベントが発生する。

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このデッドリーチョイスであるが、多少はこれまでの情報で正解を予想できるようにはなっているが、微妙な質問と回答候補であり、所見で正解するのはかなり難しい。

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しかも不正解の回答を選ぶと即死させられるパターンが多く、霊魂がいくらあっても意味がなかったりしていささか理不尽である。 

まぁデッドリーチョイスで死亡しても直前から再開できるので、その理不尽さもそれほどは気にならない。

 

怪異との対決

各章のクライマックスでは、一連の超常現象の原因となる怪異との対決となる。

これまでの探索で手に入れた情報と、アイテムを駆使して怪異を成仏、または破壊すればエピローグへと物語は進み章のクリアとなる。

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イラストレイターの友野るい氏のデザインで描かれる怪異はどれも不気味で恐ろしく、プレイヤーにビジュアル面でも心理的恐怖を植え付ける。

徐々に近づいて来るにつれ、そのおぞましい姿がはっきり分かってくる演出は秀逸。

どの怪異も目の前まで引き付けなければ決定打となる攻撃を繰り出せないため、目前に迫るまで待たなければならないシステムも恐ろしさがこの上ない。

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同行させる印人によっては絶対に倒せない怪異がいるので、怪異との対峙の時はこれまでのストーリーの流れを振り返って、最適な印人を同行させよう。

怪異を成仏させた時は、印人に誰も犠牲者が出ず「GOOD END」となるが、破壊した場合はクリア扱いで次の章に移行できるが印人が死亡したりする。

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尚、追加エピソード「赤ずきん」は、ストーリー自体がゲームに登場するすべての印人が出演する関係上、全ての印人が生き残っている「GOOD END」クリアのセーブデータが無ければプレイできない。

 

愛すべき印人たち

このゲームに登場する印人たちは、皆個性豊かかつ一癖も二癖もある連中ばかり。

最初は胡散臭い奴も多いが、物語が展開していくと、意外といい奴だったりしてどんどん好感度が上がっていく。

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ちょっと生意気だったり面倒くさい印人も、様々な心霊現象と言う危機をともに乗り越えていくにつれ、友情が芽生えてきて感情移入出来るようになっていくストーリーはこのゲームの一番の醍醐味なのではないだろうか?

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 そして追加エピソード「雨の赤ずきん」ではこの愛すべき印人たちが再び登場!

本編での恩を主人公に返す為、主人公が挑む怪異事件の解決に向け、印人が全員再集結して協力するという非常に熱い展開となっている。

これはプレイしない訳にはいかない!

 

かなりグロい描写

先ほど友野るい氏のデザインするイラストが恐ろしいと書いたが、恐ろしいだけで無く、かなりグロい描写でもある。

レイティング区分はCERO:Dとなっているが、「これZ指定でいいんじゃね?」というレベルの残酷描写である。

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本記事に掲載しているスクリーンショットは、本タイトルの残酷描写の中ではかなり緩いものだと認識して欲しい。

こんなものでは無いおぞましい描写も多々あるので、残酷描写耐性が低い方は要注意である。

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筆者はホラーゲームはいくつもプレイしてきたので、ある程度の耐性はあるつもりだったが、残酷描写以外にも、いわゆる生理的に得意ではない虫や蛇などの描写も多く、結構精神的にヤラれた(笑)

 

謎のステータス表記

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余談ではあるがこのゲーム、プレイ時に髭や眼鏡などのキャラメイクができ、「肉体」「知能」「霊力」「器用」などの各種パラメーターが割り振られるが、このステータスはゲームプレイ及びクリアに対して一切の意味を持たない(笑)

これは本タイトルの開発当初はホラー&ダンジョンRPGとして企画され、のちにテキストホラーアドベンチャーに路線変更されたので、その時の名残として残ってしまったらしい(笑)

 

古き良きホラーアドベンチャー

都市伝説・心霊などを題材にした古き良きテキスト型アドベンチャーである本作。

舞台も1990年代とプレイしながらもどことなく懐かしい雰囲気のゲーム。

インターネットという言葉が出てこず、携帯電話が普及し切ってない様子を見ると1990年代前半(平成3年~8年ころ?)と予想する。

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古くはトワイライトシンドロームなどホラーADVは名作も数多かったが、最近はかなり数も減り、あまり見なくなっていたのでテキスト型ホラーADVファンとしては嬉しいタイトルだった。

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平成初期の時代設定が余計怖さを増幅させたのかも知れない。

電話ボックスでの心霊エピソードなどはこの時代はごまんとあったが、携帯電話が1人1台が当たり前の現代ではあまり聞かなくなってしまった。

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とは言っても実際に使ったことが無くても、文化としては知っているはずなので今の若い人も十分楽しめると思う。

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実際にゲームとして評価すると、理不尽なデッドリーチョイスや怪異との対峙システムなどいろいろと問題点もあるが、ことホラーADVに至っては「作中の雰囲気」と「シナリオと演出」、そして「登場人物の魅力」がすべてだと思うのでその点では満足のいく作品となっていた。

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エクスペリエンスの心霊ホラーシリーズ第二弾としてPSvitaで2018年9月に発売された『NG』も、2019年2月21日にPS4への移植発売が決定済みであり、こちらも楽しみである。

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なんにせよプレイしている内に20数年前に遊んだ「トワイライトシンドローム」や「かまいたちの夜」などを思い出してしまう本タイトルのような作品が次世代機でまた遊べるのは素直に嬉しい。

 

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これからも身の毛もよだつような物語でプレイヤーを恐怖のどん底へ叩き落してくれるようなホラーADVの発売を期待している。

今回は決して逃れられない「死」に抗い、怪異に立ち向かう切なくもおぞましい恐怖の物語『死印』の紹介でした。

 

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