『闘人魔境伝 ヘラクレスの栄光』は1987年6月12日にデータイーストよりファミリーコンピュータ専用ソフトとして発売されたロールプレイングゲーム。
のちにシリーズ化され、1994年にかけてFC・SFCにて続編が『4』まで制作され、GBでは『外伝』が発売された。
『闘人魔境伝 ヘラクレスの栄光』とは
1987年1月に発売された『ドラクエ2』の影響により、この頃ファミコン市場では空前のRPGブームが巻き起こっていた。
各メーカーが挙って“ドラクエ風”なソフトを開発する中、 データイーストも御多分に洩れずブームに便乗し、発売したのが本作『ヘラクレスの栄光』である。
ゲーム画面はパッと見『ドラクエ』に似ていたが、中身は斬新なシステムを多々採用しておりオリジナルティに溢れるタイトルである。
しかし理不尽な難易度の謎解き、戦闘バランスの調整の悪さなどから後述する「デコゲー」として揶揄されることとなる。
ストーリー
まだ神々がいた頃のギリシアが舞台。
神々は天界に住み、地上では人々が暮らし、それぞれ平和な日々を過ごしていた。
しかしある時、地獄の魔王ハデスにより女神ヴィーナスが誘拐された事により、その平安は破られてしまった。
地上の人々には不安が走り、国も心も荒み始めていた。
事態を重く見た大神ゼウスは勇者ヘラクレスを呼び寄せ、魔王ハデス討伐とヴィーナスの救出を命じたのだった。
「デコゲー」とは
「デコゲー」とは本作を制作したデータイースト株式会社(Data East Corporation)が開発したゲーム全般に対する愛称である。
データイーストは自社広告に「ヘンなゲームならまかせとけ!」などと謳ってるだけのことはあり、手掛けるゲームはどれも尖ったものばかりであった(笑)。
ゲーマー達からみた「デコゲー」のイメージは“ヘンで大味”だが“完成度はともかく発想は他に類を見ない”であり、独自性に限っていえ当時名作を量産していた“ナムコやセガに引けを取らない”などとちょっとぶっ飛んだ方向ではあるが愛されていた(笑)。
ここが「デコゲー」
本作はまさにデコゲーと言える尖った要素がてんこ盛りである。
その中のいくつかを紹介する。
タイトル
『ヘラクレスの栄光』というタイトルだが、これはギリシャ神話に登場する最高位の女神「ヘラ」から命じられ12の功業を成し遂げた主人公を讃え、人々は「ヘラの栄光」を意味する「ヘラクレス」と呼ぶ様になったという。
つまり『ヘラクレスの栄光』とは正確に訳すと『ヘラの栄光の栄光』である。
ちなみにアテネの街のバーにいる女マスターは主人公のことを「ヘラちゃん」と馴れ馴れしく呼ぶが、上記を踏まえるとこれはもう女神に対する侮辱である。
カニ歩き
『ドラクエ1』ではカニ歩きだったキャラは『ドラクエ2』で前後左右の方向を向いて歩く様になった。
『ドラクエ2』以降に発売となった本作の主人公ヘラクレスはもちろん前後左右を向いて歩くがなぜか村人などのNPCは全てカニ歩き。なぜ主人公だけ…?
しかも村人はカニ歩きであるにも拘らず異常に軽快なフットワークで流れる様に歩き回るため、話を聞くのも一苦労である。
重要アイテム
本作はクリアに必須な重要アイテムも道具屋で売却することが可能である。
売却後買い戻すことはできない。
しかしパスワード入力によるコンティニューすると全てのボスと宝箱の中身が復活するので、実質詰むことにはならない。また再入手する手間はかかるが…。
回復アイテム
本作では体力回復用のアイテムとして食料品がある。
しかしギリシャ神話をモチーフとしている世界観なのにも拘らず、登場する食料品は「豚カツ」「白菜」「秋刀魚」など…。
ヘラクレスが豚カツ食ってる姿を想像すると笑える。
パスワード
本作はパスワードによるコンテニューを行うことができるが、なんとこのゲームはパスワードが少々間違っていてもゲーム再開できる。
むしろ間違っていた方が、進行上有利となることも多々ある。
最後に
昭和62年。
『ドラクエ2』に夢中になりRPGの楽しさを覚えたファミっ子達は『ドラクエ2』クリア後も新たな冒険を求め、次なるRPGを求めていた。
筆者もそんなRPGに飢えた1人の小学生だった。
そんな時にファミマガなどのファミコン雑誌に新作ソフトとして紹介されていた本作はドラクエに酷似しておりかなり期待を集めていた。
しかし実際に購入しプレイをすると『ドラクエ』とは全く違うぶっ飛んだシステムにファミっ子達は度肝を抜かれた(笑)。
どちらかと言えばクソゲーよりの評価を受ける事が多い本作ではあるが、その斬新なシステムは評価すべきモノも多い。
例えば両手剣の概念(攻撃力が高い代わりに盾が装備できない)や、装備に耐久力があり鍛冶屋で修理をしながら使うという設定も今でこそ当たり前だが、当時のファミコンRPGでは初めての試みである。
BGMもなかなかの名曲ぞろいでクオリティが高かった。
そんな本作の評価を下げた理由として、異常な敵とのエンカウント率の高さが一番に挙げられる。
数歩歩くごとに戦闘になるためかなりダレてしまうのと、それに伴い攻略難易度が跳ね上がってしまった。
これが当時ファミコンのユーザー層の中心であった低年齢層には致命傷となった。
ちなみに筆者もそのエンカウント率に心が折れて途中でクリアを断念した。
もしもエンカウント率のバランスが良ければ、他の尖った部分は「クソゲー」というより「デコゲー」として容認される可能性も十分にあったと思うので色々と残念なタイトルである。
しかしそんな“本作の良さ”を理解するゲーマーも多かったのか、本作はシリーズ化され、実に4作のナンバリングタイトルと1作の外伝がのちに発売される。
その全ての作品が一切の妥協のない尖った「デコゲー」である事に間違いはなかったが、『Ⅲ』『Ⅳ』などはそのシナリオの素晴らしさで名作と謳われる事となった。
今回は『闘人魔境伝 ヘラクレスの栄光』の紹介でした!
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