『クロス探偵物語』は1998年6月25日にワークジャムによりPlayStation用ソフトとして移植・発売されたコマンド選択式アドベンチャーゲーム。
1999年8月1日に同社によりPlayStatioにて再発売された。
本記事の画像はPlayStaition版を掲載している。
クロス探偵物語
『クロス探偵物語は』ワークジャムより発売されたコマンド選択式の本格推理アドベンチャーゲームである。
高校を卒業したての探偵「黒須剣」はスケベでお茶目な男だが、まっすぐな性格と鋭い推理力を持っている。
勝気な性格である女性助手「西山友子」と共に数々の難事件を解いていくストーリーは馴染みやすく一気にその世界に引き込まれる。
そのほかの登場人物も「老練なベテラン探偵」「有名推理作家の孫娘」「ぶっきら棒な刑事」など探偵物にはドンピシャリなキャラが続々登場してき、まさにこの手のジャンルの王道的ストーリーと言える。
トリックも当時の探偵ゲームとしてはかなり本格的であり、探偵アドベンチャーゲームファンの間でも名作と謳われたタイトルである。
SS版とPS版の相違点
オリジナルであるセガサターン版のみ『もつれた7つのラビリンス』というサブタイトルが付いている。
移植されたPlayStation版では、テキストのみだった主人公の音声が声優により収録され、重要な視点の画像など多くのグラフィックが追加されている。
他にも新規オープニングムービーの追加、一部トリックの変更・追加などが行われた。
特典としてドラマCDが付属された。
ストーリー
早くに母親を亡くした主人公「黒須剣」は、父と二人暮らしをしていたが、その父も小学生の時に交通事故で帰らぬ人となっていた。
それから数年後──。
高校を卒業した黒須は父の墓参りに訪れたところで1人の女性に出会い、「父親の死は交通事故のように見せかけた殺人であった」と示唆される。
実は黒須も遺された保険金が2億円と大金であったことから、父の死に密かに疑問を抱いていた。
黒須は父の死の謎を抱えつつも、正義を守る遺志を継いで探偵になるため、噂に名高い名探偵に弟子入りしようとある探偵事務所を訪れる…。
第1話「名探偵登場」
名探偵と名高い冴木達彦に弟子入りしようと冴木探偵事務所を訪れた剣。
所長の冴木が留守中であり助手である友子が対応している中、事件の依頼者である女子大生が事務所に訪れた。
剣は弟子入りを認めてもらうため、不在の冴木の代わりに事件を解決しようと勝手に依頼を引き受けてしまう。
第2話「疑惑」
とあるマンションの密室で一人暮らしの男性の首吊り死体が発見された。
室内には争った形跡が無く、盗まれたものが無かった状況から警察は自殺と断定したが、被害者の母親は「息子は絶対に自殺をするような子じゃない。誰かに殺されたのだ」と強く主張し、藁をも掴む思いで冴木探偵事務所を訪れる。
第3話「ゆがんだ名門校」
名門女子校・エリス女学館に勤める教師が短い期間に立て続けに癌に犯され死亡した。
当初は偶然病死のタイミングが重なっただけと思われたのだが、厳しすぎる校則の撤廃とそれが叶わぬ場合の次なる犠牲者を示唆する脅迫状が、校内掲示板に貼り出される事件が起こる。
第4話「依頼者」
剣が冴木探偵事務所に入りたての頃のある雨の夕方、冴木が不在中に「恋人が宇宙人がどうか調べて欲しい」と依頼してきた男がいた。
いぶかしむ友子を尻目に彼は静かに語り出す。
第5話「紺碧の記憶」
友子から姉でありモデルの美麗がCM撮影のロケをしていると聞きつけ、休暇を兼ねてロケ地である南伊豆の「ゆきが浜」にやってきた剣たち。
夕食後、友子と共に見晴らしの良い断崖絶壁にあるという美麗の宿泊先のホテルに訪れる剣。
しかし、そこで宿泊中のCMスタッフ2名が無残な刺殺死体で発見されたのだった。
第6話「満月の夜に」
満月の日はツイてない…そのジンクスを固く信じ絶望感に苛まれる男の代わりに、ビルの最上階にある忘れものを取りに行くことにした剣。
彼は制限時間以内にセキュリティだらけのハイテクビルの中を最上階までたどり着き、男の願いを叶える事が出来るのか。
第7話「タランチュラ」
冴木に「絶対に関わってはいけない」と忠告された犯罪組織。
しかしその組織から黒須宛に一通の置き手紙が届く。
それには「鹿鳴館に招待するので興味と勇気があるなら来い。来なければ冴木達彦同様に“負け犬”として一生を生きることになる」と書かれていた。
剣は冴木の忠告を破り、父の死に繋がる真相を求めて、謎の組織の秘密に迫るべく指定された場所である山奥にヒッソリと建つ鹿鳴館に向かう。
登場人物
黒須剣
本編の主人公。冴木探偵事務所所員。
一度視たり聴いたりした物は意識すれば絶対に忘れない。更に、いつでも思い通りに回想が可能という特殊能力を持つ。
西山友子
冴木探偵事務所の受付兼経理事務担当。
一見するとスポーティーな容姿で可愛い感じだが、鼻っ柱が強い男勝りな女性。口うるさく少々ヒステリー気味でオバチャンっぽいところもあるが、実は根は優しい心の持ち主。
西山美麗
友子の自慢の姉。
ファッション雑誌・CMなどで活躍する売れっ子モデル。
黒のロングヘアと長身、グラマラスな体型が特徴の、誰もが思わず目を見張る超美人。その容姿とは裏腹にとても親しみやすくお茶目な性格。
高梨まゆな
名門御三家のお嬢様校と呼ばれるエリス女学館高等部に通う女子高生。
綺麗なストレートの黒髪と切れ長の目を持つ美少女。
実は両親が世界的な音楽家で、日本のみならず世界でも著名な推理作家・高梨呂秋の孫娘。
広川千絵理
まゆなと同じくエリス女学館高等部に通う女子高生。
ショートヘアに少しポッチャリとした童顔の持ち主、恥ずかしがり屋で引っ込み思案なおとなしい性格の女の子。
しかしその愛らしい顔に見合わない張りのある爆乳の持ち主。
美樹夏子
超一流の新聞記者でフリージャーナリスト。
眼鏡がトレードマークで薄茶のロングヘアが特徴の才知溢れる大人の女性。
大川慶一
警視庁捜査1課所属の刑事。
剣の父・信介の元部下で剣とも幼い頃から面識がある。
探偵となった剣と再会し、それ以降陰ながらサポートをする。
林田謙三
警視庁きってのエリート刑事で階級は警視。
非常に気が荒く暴力的で、自分の意に介さないことは力ずくで排除する強引な捜査をすることで怖れられている。
発売されなかった続編
発売当時ワークジャムは「ファミ通」のインタビューに対し「続編は必ず制作する」「構想はほぼ完成している」と答えている。
02年の新作発表会では「これから同社は『探偵 神宮寺三郎』シリーズ、『クロス探偵物語』シリーズを2本の柱に、ゲーム制作に注力していく」と完全にシリーズ構想が存在していた。
さらに本作にはエンディングのあとに続編の予告ムービーまで収録されていたのにも関わらず続編が制作されることは無いままワークジャムは2011年に倒産してしまった。
絶望的と思われた続編であったが、2016年にアークシステムワークスが、ワークジャム関連のタイトル事業に纏わる無体財産権を譲受する事になり、また希望の光が見えてきている。
本作は稀に見る傑作ではあるが、シナリオに伏線が残されたままの箇所も多く、主人公の父親の死やその他の人物との関係が消化されないままになってしまっている。
ぜひ、アークシステムにはその全ての謎の答えが描かれた『クロス探偵物語2』を発売して欲しいと思う。
アークシステムワークス株式会社は2016年12月20日より、エクスプライズ株式会社が所持する「探偵 神宮寺三郎シリーズ」「Theresia-テレジア-シリーズ」を含む、ワークジャム関連のタイトル事業に纏わる無体財産権を譲受する運びとなりましたことをお知らせいたします。#神宮寺三郎 pic.twitter.com/p31JJgQYAE
— アークシステムワークス公式ツイッター (@ARCSY_Event) 2017年2月6日
最後に
本作はストーリー、トリック、人間関係など全ての要素が非常に高いレベルで完成されており、探偵物が好きなプレイヤーなら絶対に楽しめるアドベンチャーゲームである。
7話の物語はどれも秀逸であり、登場人物も個性豊かで好感が持てる。
ユニークなキャラが繰り広げる舌戦や、間違った箇所をクリックした時の(女性の胸元など)反応がいちいち面白くあちこちにユーモア要素も散りばめれれている。
しかし主人公を筆頭に、決めるところはビシッと決めてくるところなど、プレイヤーを心から満足させる工夫がしっかりと凝らされている極上のエンターテイメント作品である。
個人的には数ある推理アドベンチャーの中でもトップクラスの面白さであり、歴史に残るタイトルだと思っている。
版権問題によりリメイク、アーカイブス配信などはされていないので、2019年6月現在でプレイするとなるとPS版かSS版を遊ぶ以外方法がない。
その為少し敷居は高いと思うが、チャンスがあればぜひプレイして欲しい。
今回は推理アドベンチャーゲーム屈指の名作『クロス探偵物語』の紹介でした。
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