『コブラ 黒竜王の伝説』は1989年3月31日にハドソンよりPCエンジンCD-ROM²用ソフトとして発売されたアドベンチャーゲーム。
寺沢武一の漫画作品『コブラ』を原作とするコマンド選択式のADVである。
コブラとは
『コブラ』は1978年から1984年にかけて週刊少年ジャンプにて連載されていた寺沢武一原作の漫画である。
左腕に特殊な高性能銃「サイコガン」を付けた、一匹狼の宇宙海賊・コブラの活躍を、アメコミ風タッチで描く痛快SFアクション。
1982年には『スペースコブラ』としてTVアニメ化もしており昭和のジャンプコミックス人気の一旦を担う作品である。
ストーリー
宙域サルファ・トライアングル。
ここには古代エルボ人の遺した“星種子”(スター・シード)の繁殖場があり、輝く光の雲の美しさから、宇宙でも指折りの観光地となっていた。
コブラを乗せた観光宇宙船クイーン・ラブ号も、“星種子”見物の観光客でにぎわっていたが、コブラの目的は船内に展示されているある宝物を盗むことだった…。
PCE版『コブラ 黒竜王の伝説』
開発経緯
1988年12月4日に発売されたCD-ROM²は世界初のディスクメディア媒体を使用した家庭用ゲーム機であったが、まだロムカセットでの開発が一般的であった時代においてソフト開発をできるメーカーが少なく、ローンチタイトルであった『ファイティング・ストリート』と『No・Ri・Ko』以降まったく新作が発売されていなかった。
キラータイトルである『天外魔境 ZIRIA』においても大幅な開発の遅れが生じており、発売までまだだいぶ掛かるとの見通しであった。
そのためハドソン営業部から早急にCD-ROM²専用ソフトの新作発売を要望され、立ち上げから2ヶ月ほどで制作されたタイトルである。
CD-ROMの大容量
本作はオーソドックスなコマンド選択式のADVであるが、それまでのロムカセットであったゲームソフトとは桁違いとなるCD-ROMの容量を最大限に活かすように開発されることとなった。
グラフィックは原作の絵を取り込んだものを大量にドットに起こしており、キャラクターはアニメーション処理を施され、さらにフルボイスではないが重要な場面では声優を起用したアフレコで演出されている。
この様な映像や演出は当時のゲームでは類を見る事がなく、本作はCD-ROM媒体の凄さを知らしめる事となった。
デジタルコミック
グラフィックの綺麗さや演出等により見ているだけでも楽しめる事もあり、従来のADVにあるようなフラグ探しを極力減らし、純粋にストーリーを楽しませることをメインとしている。
のちにPCEソフトとして各メーカーから同様の手法を用いたタイトルが複数販売された。
この様なゲームをADVにありがちな謎解きやコマンド総当たりなどをしなくとも、漫画を読んでいる様にゲームを進めていける事から「デジタルコミック」というひとつのジャンルとして呼ぶ様になった。
本作の発売時にはまだこの呼び方はなかったが、「デジタルコミック」の元祖となったと言って良いタイトルである。
原作の雰囲気を忠実に再現
原作者である寺沢武一が監修を務め、ストーリーは原作にある「黒竜王」編をベースに、他編や本作独自のエピソード・キャラクターを組み込んだ形で構成されている。
さすが寺沢武一監修なだけあり、原作の持つ独特の世界観やハードボイルドな台詞回しなど『コブラ』という作品を完全に再現している。
主人公のコブラ役の声優には山田康雄を抜擢。
アニメ版『スペースコブラ』は野沢那智であったが、山田康雄のコブラはまったく違和感なく溶け込んでいた。
このゲームの影響で筆者の中でのコブラの声は完全に山田康雄となった。
筆者と『コブラ 黒竜王の伝説』
CD-ROM² のローンチタイトルである『ファイティング・ストリート』にも飽きてきた頃、突然発売された本作。
新しいCD-ROM²ソフトに飢えてた筆者は当然すぐさま本作に飛びついた。
元々アニメで『スペースコブラ』を見たことがあったのですんなり物語に没入することができ、CD-ROMならではの“デジタルコミック”の衝撃に酔いしれた。
今までのゲームの常識を覆す演出とグラフィックには本当に感動したことを今でも憶えている。
その後CD-ROMの大容量を生かしやすいデジタルコミックは量産されることとなり、1990年にはデジタルコミック第2弾である『うる星やつら STA WITH YOU』が、1991年には本作の続編である『コブラⅡ 伝説の男』などが発売されしばらくはブームが続くこととなった。
そんなデジタルコミックの先駆けとなった本作は、その後のディスクメディア媒体のゲームに多大なる影響を与えたタイトルであると言えるだろう。
今回は『コブラ 黒竜王の伝説』の紹介でした!
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