『水晶の龍(ドラゴン)』とは1986年12月15日にスクウェアがファミリーコンピュータディスクシステム用ソフトとして発売したアドベンチャーゲーム。
スクウェアがゲーム制作会社として独立してからは3本目のファミコンソフトであり、初めてのADVゲームでもある。
後述するDOGブランドにて発売となった。
DOGブランド
「ディスク・オリジナル・グループ」、通称「DOG」とは1986年に「スクウェア」を主軸にゲームメーカー7社で結成されたFDS専用ソフトの開発を手掛ける連合体のブランド名である。
残念ながらミリオンヒットは1本もなかったが、『水晶の龍』『クレオパトラの魔宝』『アップルタウン物語』『とびだせ大作戦』『ディープダンジョンシリーズ』などなど“良くも悪くも”ファミっ子の心に深く刻み込まれるタイトルを世に送り出した。
1988年以降ROMカードリッジの多機能化に伴いFDSの開発が下火になり自然消滅した。
尚、現在は加盟7社の内「スクウェア」以外は廃業、または既存していてもゲーム開発からは撤退している。
水晶の龍
スクウェアが株式会社として独立してからは初めてのADVであり、DOGにとっても第1弾となるタイトルである。(本作の発売以前に電気工事会社の一部門であった頃に3作品のADVを制作している)
プレイヤーはSF世界観の舞台で、宇宙空間に現れた水晶の龍の謎、恋人シンシアの失踪事件を調べる主人公となり物語を進める。
典型的なコマンド選択式のADVであり、ゲーム自体はそれほど目新しいジャンルではなかったが、キャラクターデザインを「佐藤元」が請け負い、アニメーション部分を「日本サンライズ(現サンライズ)」が担当することが当時大きな話題となった。
佐藤元と日本サンライズの組み合わせは、当時人気アニメだった『ダーティペア』の原画&制作会社のコンビであり、ファミっ子だけでなくアニメファンからも期待を寄せられた。
その期待に応えるが如く本作はキャラクターが“瞬き”をしたり、現代でも通用するような“メカニックデザイン”だったりなど、当時としては規格外に綺麗なグラフィックであった。
しかしグラフィックに力を入れ過ぎたせいかは分からないが、肝心のストーリーはかなりお粗末であった。
ボリュームが少なく、すぐにクリアできてしまうだけでなく、張り巡らされた伏線がほぼ未回収のままエンディングを迎える物語はプレイヤーを満足させることはできなかった。
おまけにADVでありながらBGM無しであることや、長すぎるロード時間も不評に追い打ちをかけた。
極めつけは販売に際し流したテレビCMの中でエンディングを流すというあり得ない暴挙もあった。
それでも売上本数は販売(35万本)、書き換え(15万本)合わせ50万本を売り上げた。
ストーリー
ある日、ガールフレンドのシンシアにシャトルでの宇宙遊泳に誘われたヒュー。
楽しい時間を過ごす彼らだったが、突如目の前に噂に聞いたあの「水晶の龍」が!
シンシアのシャトルは破壊され、ヒューも強烈な衝撃を受け、目の前が真っ暗になった。
気が付くとそこは別の宇宙船の中。
そばにはユージンと名乗る見知らぬ女性がいた。
ヒューはシンシア、ナイルの行方を追うべく行動を開始した。
野球拳でシンシアが脱ぐ!?
本作にまつわる一番有名なエピソードと言えば、ファミマガのウル技(ウルテク)で紹介されたヒロインであるシンシアと野球拳ができ、勝てばシンシアが脱ぐという裏技の話だろう(笑)。
先述した通り、このゲームはグラフィックだけは抜群に綺麗で、ヒロインであるシンシアの可愛さは当時としてはゲーム界トップクラスであった。
このシンシアと野球拳をして脱がすとHな姿が見られると知ったファミっ子たちは大興奮!
インターネットもなく、男子小学生の性欲を満たすモノなど道端に落ちてるエロ本くらいしかない時代である。
子供たちは挙って『水晶の龍』にディスクカードを書き換え裏技に挑戦した。
実際にこの裏技が掲載されてから暫くの間は店頭では『水晶の龍』が売り切れ続出となり、書き換え枚数は何倍にも増えたという(笑)。
しかしこの裏技、実は嘘テクというガセネタである事がのちに発覚。
子供たちは絶望し、大人を信じられなくなった(笑)。
恐らく数ある嘘テクの中でも1番有名であり、昭和のファミっ子なら誰もが今でもはっきりと憶えている事件であろう(笑)。
筆者と『水晶の龍』
筆者はこのソフトを……所持していたに決まっている(笑)。
勿論発売日に買ったのではなく、野球拳の裏技がある事を知って即書き換えてきた。
しかしファミマガを読みながら、問題の場面で何度も裏技を試みたのだが、何度やってもシンシアは脱ぐどころか野球拳すらやってくれない。
何時間も挑戦し、翌日も、そのまた翌日も頑張った。
されどもテレビの中のシンシアは服を着たまま。
ファミマガで嘘テクだと明かされた時は、幼心に徳間書店を怨んだものだ。
今でも忘れられない幼少期の切ない思い出だ。
この作品はまったく悪くなく、ファミマガの嘘テクが全ての元凶なんだけどね(笑)。
本作はゲーム本編の内容よりも存在しない野球拳のことの方が記憶に深く刻み込まれているという特別な作品となってしまった。
今回は昭和の少年たちの純粋な気持ちを無残にも踏みにじった問題作『水晶の龍(ドラゴン)』の紹介でした!
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