『メタルギア』は1987年12月22日にコナミよりファミリーコンピュータ用ソフトとして発売されたステルスゲーム。
小島秀夫監督の初のプロデュースタイトルであり、日本で初めてのステルスゲームであった1987年7月発売のMSX2用ソフト『メタルギア』のファミコン移植版である。
しかしMSX2版の約半年後に発売されたファミコン版は名作として名作と名高いオリジナルとはまったくもって似て非なるモノであった…。
- 『METAL GEAR』シリーズ
- 国内初のステルスゲーム
- ファミコン版『メタルギア』
- 隠れられない、必ず見つかる
- 敵は無制限に復活する
- メタルギアが登場しない
- 小島監督自ら「クソゲー」発言
- 筆者と『メタルギア』
- あわせて読みたい
『METAL GEAR』シリーズ
『METAL GEAR』シリーズはゲーム界に多大な影響を与えたステルスゲームの金字塔であり、シリーズを通しての通算販売本数は5,380万本を超え、コナミにとっても代表格と言えるタイトルである。
小島秀夫監督プロデュースの元、1987年の初代MSX2版から2015年の『ファントムペイン』までハードを乗り換えながら実に9作のタイトルが製作されている。
完全版、リメイク版まで含めるとさらに数多くの『メタルギア』が発売となった。
上記すべての作品が大ヒットとなる国内No. 1ステルスゲームと言っても過言ではないシリーズとして全世界で絶賛されている作品である。
国内初のステルスゲーム
オリジナル版の開発は当時流行っていた『戦場の狼』のような戦争をテーマにしたアクションシューティングのようなゲームを制作するようにとコナミから小島監督が指示を受けて始まった。
しかしMSX2のハードスペックではたくさんの敵を一斉に動かすのが難しかった。
そこで小島監督はステルスゲームに変更することで、戦場の臨場感を演出しながらゲームを展開させてゆくシステムに仕様を変更する。
こうして敵の視覚や聴覚から身を隠しながら敵基地に潜入し、戦闘を避け、一方的殺害しつつ作戦を実行していく、日本で初めてとなるステルスゲームが生まれたのである。
ファミコン版『メタルギア』
オリジナル版であるMSX2版の評判が良かったため、当時ダントツの家庭用コンピュータゲーム市場を築いていたファミコンでも『メタルギア』を発売しようとするコナミによってファミコン版『メタルギア』の移植が計画された。
“たかが移植”と甘く見たのか、“小島監督が多忙”であったか、理由は分からないがこの移植には小島監督はおろか、MSX2版の開発スタッフすらほとんど関わっておらず、オリジナル版とはまったくの無関係のメンバーで開発される事となった。
これが悲劇の始まりであった…。
完成したファミコン版ではありとあらゆる部分で、小島監督の創ったゲーム性は無視され、オリジナルに対するリスペクトの概念なども無いように見て取れる別物であった。
その代表事例として主人公スネイクが所属する部隊「FOX HOUND」ですら、ゲーム上では「ホックスハウンド」と誤植されている。ホックスってなに…?
隠れられない、必ず見つかる
ファミコン版の『メタルギア』ありとあらゆる仕様で、オリジナルとは違っている。
まずステージ上の敵の配置に問題がある。
ステルスゲームでは隠れながら敵の配置や巡回ルートを把握して、敵に発見されないようにしながら敵のアジトなどへ潜入していくのが醍醐味である。
にも拘らずファミコン版では敵兵士が何も考えられず配置されており、動いた瞬間に強制発見されたり、部屋に侵入するなり即発見されるなど、かなりステルスし辛い。というかほとんど発見される。
ステルスゲームなのにまず発見されることから始まる理不尽さにプレイヤーは頭を抱えるだろう。
敵は無制限に復活する
ステルスゲームなのに隠れることが酷く困難な仕様の為、敵と遭遇したら殺すしかないのだが、移動してその場に戻ると、漏れなく倒した敵が復活している。
これには困る。このゲームで敵が復活するということと発見され戦闘になる事はワンセットなのでその内弾薬もライフも無くなる事は明白。
“この地点は制圧!クリア!”などということは、何度でも蘇る敵兵士の前では幻想だと諦めて、なるべく同じ場所に戻らなくてよいようにゲームを進めるしかない。
ちなみにアイテムの双眼鏡を覗いただけでもなぜか敵は復活する。
メタルギアが登場しない
本作は主人公「ソリッド・スネイク」が、核搭載二足歩行戦車「メタルギア」を破壊するため南アフリカの奥地にある敵要塞へ単身潜入するシナリオであるのにも拘わらず、ファミコン版『メタルギア』には「メタルギア」が登場しない。
にわかには信じがたいが、最後の最後まで「メタルギア」は登場しない。
物語は「メタルギア」を制御するスーパーコンピューターを破壊するところで終わる。
タイトルにまでなっている兵器「メタルギア」と戦えないだけでなく、その姿すら一度も画面に現れることなくエンディングを迎える。
小島監督自ら「クソゲー」発言
本作が発売されたのちのことではあるが、小島監督はラジオ番組でこの“マップ”、“敵の配置”、“潜入方法”の全てがオリジナルと異なる本作について「ファミコン版のメタルギアはクソですよクソ!」と歯に衣着せぬ爆弾発言をしている。
この頃から小島監督とコナミの確執は始まっていたのではないかと思ったりする…。
筆者と『メタルギア』
筆者はこのソフトは保有しておりませんでしたが、友達が持っていたので借りて遊んだことがあります。
『メタルギア』ファンやゲーマーたちの間では超クソゲー扱いの本作ではありますが、なぜか筆者は結構楽しくこのゲームを遊んだ記憶があります。
このゲームをプレイした時はまだ幼く、もちろんステルスゲームというジャンルは遊んだことはありませんし、知りもしませんでした。
始めはそれこそ即発見され敵がワラワラ集まってきてすぐにゲームオーバーになり「なんだ?このゲーム??」となりましたが、居眠りしている敵はこちらに気づかない事や後ろから忍び寄るとバレずに近づけることを知った時は子供心にめちゃくちゃ感動したものです。
友達と2人でファミコンの前に座り、「そこはこうするんだよ!」とか「監視カメラの真下なら発見されないんじゃないか?」などと考えながら少しずつステージを進めていくのがとても楽しかったです。
確かに今プレイすると、ステルスゲームを名乗るのはおこがましいめちゃくちゃなゲームではありますが、筆者にとってはクソゲーとは言い切れない思い出のタイトルです。
やはりゲームは友達と試行錯誤しながら協力してプレイするのが一番楽しいんですね!
今回はファミコン初のステルスゲーム『メタルギア』の紹介でした。
あわせて読みたい